2011年の震災を機に、食の安心安全を伝えるために大規模貸し農園の運営を手がけ、2016年春に独立、フリーランスの農園コンサルタントとして活動している。そのかたわら発酵クリエイターとして味噌作りなどの食農イベントも多数開催。農業、狩猟、釣りなど、オールラウンドに自然を楽しむ。千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。畑を通じて自然教育、食育を発信している。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
食卓に欠かせない伝統食のひとつ、豆腐。日本人にはとてもなじみ深い食材ですが、実際に作ったことのある人は少ないのではないでしょうか?
豆腐の素材は大豆を絞った豆乳とにがりです。豆乳に含まれるタンパク質をにがりで固めることによって豆腐は作られます。
それでは、にがりとはいったいなんでしょう。その正体は海の水。海水を煮て水を蒸発させると、最後に塩といくつものミネラルを含んだ溶液が残ります。この溶液がにがりです。にがりと塩を作るのは簡単。海水を煮詰めて濾すだけで塩とにがりを分離できます。
いくつかの鍋と豆乳があれば、自分で取ったにがりで豆腐を作ることができます。今度の海遊びでは、美味しい豆腐を海の水から作ってみませんか?
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豆乳(大豆固形分10%以上)
500ml
海水
1L
大鍋(容量1L以上)
1個
小鍋(容量500ml以上)
1個
計量カップ
1個
ざる(容量400ml程度)
1個
サラシ布(20×20cm)
1枚
木べら
1本
豆腐は大豆の搾り汁を凝固剤で固めた食べ物で、中国から伝来して室町時代には日本各地に広がったと言われています。
日本の食卓に上がる豆腐には大きく2種類、木綿豆腐と絹ごし豆腐があります。木綿豆腐は、豆乳に凝固剤であるにがりを入れた後、布を敷いた型に入れて圧搾・成形して作ります。その際に豆腐の表面に布目の跡が付くため、木綿豆腐と呼ばれています。もうひとつは絹ごし豆腐。こちらは濃い豆乳とにがりを使い、脱水せずにそのまま固め、最後に水にさらしてアク抜きをして作ります。
どちらの豆腐も手作りが可能ですが、今回は野外でも作りやすい木綿豆腐を例にご紹介します。
海水にはさまざまなミネラルが溶け込んでおり、そのうちの3.5%ほどが塩分で、その塩分の78%ほどが、わたし達がふだん料理に使っている食塩(塩化ナトリウム)です。
海水から食塩を取り出すには、煮詰めて結晶化させる必要がありますが、その工程で分離されるのがにがり。その主成分は塩化マグネシウムや塩化カリウムなどです。塩化マグネシウムには、タンパク質を凝固させる作用があります。
にがりを作る際はなるべくきれいな海水を汲みます。澄んだ海水を入手するコツは、外海に面した磯や堤防、岩浜で海水を汲むこと。川の河口近くや砂浜では不純物が多く混じります。
海水の透明度は潮回りの影響も受けます。潮が大きく動く大潮の前後は、外海から澄んだ水が入り込みやすいですが、干満が小さくなる小潮の前後は岸近くに水が滞留しやすくなります。
また、干潮から満潮へと向かう上潮のタイミングに汲むことも重要です。上潮では新鮮な海水が沖側から流れ込んでくるので、少しひんやりとしていて、それまで磯に滞留していた海水と違うことがわかります。
海水を汲む際は、静かにゆっくりとボトルを沈めます。水面にはさまざまな不純物が浮いているので、少し沈めて不純物の少ない海水を回収します。目に見える不純物が多い場合は、ボトルの口にガーゼなどを当てて濾過しましょう。
海に入って海水を汲むときは、落水・転倒等に注意して作業をしましょう。
現在、わたし達がスーパーマーケットなどで手にする食品の多くは、工場で大量生産されたものが主流となっています。それは伝統食も例外ではありません。
工場生産と聞くと難しい技術のように感じますが、元々は人の手でひとつずつ作られていたもの。わたし達でもきちんと手順を踏んで手作りすれば、市販品と遜色ないものや、それ以上に美味しいものを生み出すことが可能です。
にがり作りと豆腐づくりでは、加熱や濾過といった作業を通じて、調理に必要な成分を濃縮したり、化学反応によって液体を固体に変えたりします。伝統食ときくと、アナログで情緒的なイメージが浮かびますが、その製造過程では物理や化学の世界に足を踏み入れます。
料理、とくに伝統食の製造の過程では、科学の世界に属する反応をたくさん目にすることができます。調味料の配合だけでなく、調味料がどのように作られるか、それがどのように作用するかを意識すると、ふだんの調理もまた違った輝きを見せてくれるようになるでしょう。