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食の原点に触れる野外料理に挑戦してみよう

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GO!GO!編集部

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野外で調理をして「料理」の原点を考えよう

野営の技術のひとつだった飯盒炊爨に始まって、いまではキャンプでのレクリエーションの花形となった野外料理。たくさんの専門書が刊行され、キャンプ場ではサイトを離れずにずっと料理を楽しむ人も見られます。用意した食材に創意工夫を凝らして美味しい料理に仕立てるのは楽しいものですが、手の込んだ料理ならば家庭でもつくれます。せっかく野外で調理するのですから、野外でしかできない料理に触れてみるのはどうでしょうか? 屋内でつくる家庭料理は調味料や加工によって風味を高めていく足し算の料理ですが、その反対に料理の手数を引いていくことによって見えてくるものもあります。素朴な野外料理は、調理の根源について考えるきっかけを与えてくれるでしょう。

READY
準備するもの
STEP 1

人はなぜ料理をするのか考える

  • トチ。山間部ではアクを抜いて利用してきた
  • カシの実。そのままではアクが強すぎる
  • ドングリの殻を剥いて砕き、布に包み揉む
  • アクの多い上澄みとでんぷんで分かれる
  • 数度の水替えできれいなでんぷんが採れる

現代の日本人が料理に取り組むとき、その目的は「食材をより美味しくすること」にフォーカスされます。しかし、地域や時代が異なれば、料理の目的はまるで変わります。美味しさを二の次にして、調理のもうひとつの側面である「食材を安全なものにすること」が重要視されることもあるのです。人類は長い間、口にする食材から危険性を取り除くために調理や加工に手間ひまをかけてきました。

例えばドングリやトチの実などの堅果類。ドングリは縄文時代の日本人を支えた重要な食材で、トチの実は最近まで山間部で伝統食として食されてきました。しかし、これらの木の実はアク(タンニンなど)を大量に含んでいるので、クリのように焼いたり煮たりするだけでは食べることができません。水にさらして身体に有害なアクを抜くことが必要です。ワラビやゼンマイのような山菜もアク抜きが必要です。

現代の野菜は簡単な調理で美味しく食べられるように改良されていますが、改良されていない食材の多くは、安全に食べるための加工が必要です。手軽に安全な食材が入手できるようになった現代では忘れがちですが、調理には食材が帯びた危険性や不都合を取り除く側面もあります。

STEP 2

加熱調理で安全性を高める

  • アユ飯。川魚は加熱調理が無難
  • アユは肝吸虫という寄生虫をもつ
  • ウナギは血に毒がある
  • モクズガニは肺吸虫の宿主となる
  • 加熱不十分なシイタケで皮膚炎

日本人はほかの文化圏の人々と比べて魚介類の生食を好みますが、現代では川魚を刺身などで生食することは稀です。その理由は淡水魚の多くが寄生虫をもっているから。アユ、コイ、フナなどには生食の文化が残っていますが、これらの魚でも寄生虫に感染する可能性があるため、川魚の生食は廃れつつあります。

寄生虫を排除しつつ食材を安全にするもっとも手軽な方法が加熱です。寄生虫が死ぬ温度まで加温すれば、食材からの感染を防ぐことができます。寄生虫に限らずウイルスやバクテリアなども加熱によって多くの種を殺菌することができます。

寄生虫や細菌、ウイルスなどの危険因子のほかに、食材そのものがもつ毒にも加熱によって分解できるものがあります。毒をもつ身近な食材としてはウナギが有名です。ウナギにはイクシオトキシンという毒が含まれており、生食すると下痢や嘔吐を引き起こしますが、この毒は加熱によって毒性を失います。

同じくシイタケも生食によって中毒を起こすことがあります。原因物質はまだ明らかになっていませんが、シイタケを生食したり、加熱が不十分なシイタケを食べると皮膚炎を起こすことがあります。これも十分な加熱によって防ぐことができます。

STEP 3

加熱で栄養素を変質させる

  • でんぷんは加熱で吸収しやすくなる
  • サツマイモのでんぷんは加熱で糖に変わる

加熱には食品に潜む危険性を排除する効果のほかに、栄養素を変質させる効果もあります。身近な変性の実例が炊飯です。米の主成分はでんぷんですが、生米が含む生でんぷんは消化酵素の影響を受けにくく、そのまま食べても栄養を吸収することが難しい状態になっています。ところが加水・加熱すると生でんぷんがほぐされ、消化吸収しやすい状態に変化します(これをα化といいます)。加熱することによって吸収率が高まり、また食べられる量も高まります。

もうひとつの身近な例が焼き芋です。サツマイモを生で食べてもそれほど甘味を感じませんが、加熱調理をすると驚くほど甘くなる品種もあります。これはサツマイモが含んでいるでんぷんをサツマイモ自身がもつβアミラーゼという酵素が分解して麦芽糖に変えるから。加熱によって食味は大きく向上します。

この、加熱調理による吸収率の向上こそ、ヒトを人たらしめた、と考える研究者もいます。英国の人類学者のリチャード・ランガムは、200万年ほど前に猿人が現代のヒトに近い姿に大きく変わったのは火を使った調理にある、と唱えました。

化石を調査すると猿人は強い顎と大きな消化器官をもっていたことがわかりますが、この猿人に比べると現代のヒトは顎が小さく、消化器官もコンパクトになっています。リチャード・ランガムはこの変化をもたらしたのが、火を使った加熱調理だと考えました。火を手に入れる以前は、生の食材を自身の身体で砕き、消化しなくてはいけないために大きな顎と消化器官が必要でしたが、加熱によって猿人は身体の外部で吸収率を高めることができるようになりました。

加熱によって食べやすい大量の食材を得られるようになり、これによって顎と消化器官が小さくなりました。また、多くのエネルギーを脳に回せるようになったため(脳は非常に多くのエネルギーを使います)、知能も進化した、とリチャード・ランガムは考えました。

火を使った痕跡は長期間残りにくいため、この学説が完全に証明されたわけではありませんが、火で調理をしながら火に向かい続けた祖先に思いを馳せるのは豊かな体験です。
もうひとつの身近な例が焼き芋です。サツマイモを生で食べてもそれほど甘味を感じませんが、加熱調理をすると驚くほど甘くなる品種もあります。これはサツマイモが含んでいるでんぷんをサツマイモ自身がもつβアミラーゼという酵素が分解して麦芽糖に変えるから。加熱によって食味は大きく向上します。

POINT

リチャード・ランガムの説は『火の賜物―ヒトは料理で進化した』という本に著されています。

STEP 4

工業製品を使わずに料理してみる

  • 魚を葉で包んで蒸し焼きにする
  • 炉端で焼いた石の上で肉を焼く
  • 焼いた石で汁を沸騰させる

加熱によって食材の安全性を高められると書きましたが、食材の加熱は便利な容器があってこそ。容器を使わないと調理法はかなり限定されたものになります。煮汁をこぼさずに火にかけられる容器がないと、焼くことはできても炊くことができないのです。

日本に土器が登場するのは縄文時代です。それ以前の土器がない時代は先土器時代(あるいは無土器時代)と呼ばれています。石器と火はあっても土器のような器がない時代、ヒトはどのように食材を調理していのたでしょうか。

いちばん簡単なのは、焚き火の炉端の石の上で焼く方法です。石の上で火の放つ熱で調理する方法と焼いた石を鉄板がわりに焼く方法がありますが、おそらく人類最初の調理もこのようなものだったでしょう。

火にはかけられない器しかなくても食材を煮ることはできます。日本の猟師や山仕事をする人は軽量な木製の弁当箱を持ち歩いており、汁を入れた弁当箱に焚き火で焼いた石を投じて、石の熱で沸騰て汁物をつくることがありました。この方法なら、手元に木の容器しかなくても汁を加熱することができます。

蒸し焼きも道具を使わずに大きな食材を調理する方法のひとつです。植物の葉で幾重にもくるんだ食材を土中に埋めてからその上で焚き火をすると、葉の含む水分によって食材を蒸すことができます。

STEP 5

自分で調味料をつくってみる

  • 海水を煮て塩を結晶させる
  • 濾紙を使ってにがりと塩を分ける
  • 自作の塩で肉に味をつける

自然界からもっとも簡単に得られる調味料が塩です。砂糖は糖を大量に含む植物を育てて抽出しなくてはいけないし、醤油などは塩を得たうえさらに素材を発酵させなくてはいけませんが、塩は海水を煮るだけで手に入ります。

刺激的な味付けに慣れた私たちの舌は、どんな良質な食材も塩なしでは味気なく感じます。言い換えれば、塩さえあれば肉、魚、野菜のどれも美味しく食べられます。私たちの身体は塩を好みます。

現代では塩分の摂り過ぎが問題になりますが、なぜ、それほどまでに私たちの身体は塩(塩化ナトリウム)を欲しがるのでしょうか。その要因はいくつか考えられていますが、一因として現代人が穀類を食べるようになったことが指摘されています。狩猟採集時代は獣肉や堅果類などを食べており、この時代は体内のミネラルバランスがとれていたと考えられています。しかし、農耕が伝わって穀食が盛んになると、体内のカリウムとナトリウムのバランスが崩れました(穀物はナトリウムが少なくてカリウムが多く、過剰なカリウムを排出しようとするとナトリウムも一緒に排出されてナトリウムの欠乏が起こります)。そのため、穀物をつくるころから欠乏する塩を補うために製塩が盛んになっていったと考えられています。

肉と塩と白飯は私たちが無条件に美味しいと思ってしまう組み合わせですが、この3者を魅力的に感じるのは生理的な理由があるようです。

POINT

海水から塩をつくる方法は以下の過去記事を参照してください。

海水から塩とにがりを取って天然豆腐を作ろうhttps://gogo.wildmind.jp/feed/howto/246

STEP 6

センサーとしての舌を意識してみよう

  • 舌は身体に良いものと悪いものを判別する
  • 食材のもつ味を舌で確認して覚える

食材の好悪や食毒を判定する器官が舌です。ヒトは舌を使って食べられるものとそれ以外のものを区別してきました。

人間の舌にある味蕾は5種の基本の味を感じ取る受容体があり、そこに入る化学物質によって甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などを感じ取っています(最近の研究では、この5味に加えて第六の味覚として脂肪を感じる機能や塩化アンモニウムを感じる機能がある、といった説も唱えられています)。

この5つの味覚はそれぞれ、次のような理由で発達したと考えられています。

甘み:体に好ましいエネルギー源であること。
塩味:身体に必要なミネラル分であること。
酸味:口にしたものが腐敗している可能性があること。
苦味:毒を含む可能性があること。
うま味:身体をつくる栄養素を含む可能性があること

これら以外に、辛味や渋味といった感覚もありますが、辛味は物理的な痛みを辛味と感じており、渋みはタンニンなどが舌に起こす物理的な収れんを渋味と認識しているのだとか。

あらゆる食材が品質管理のプロの手を通って食卓に届く現代、自分の舌を頼りに可食と不食を判断する機会は少なくなっています。さまざまな食材を口にするときに、センサーとしての自分の舌を意識しておくと、いざというときに自分の舌で可食と不食を選り分けられるかもしれません。

STEP 7

『やった!レポ』に投稿しよう

完成したら、写真をとって『やった!レポ』に投稿しましょう!苦労したことや工夫したこと、感想などあれば、ぜひコメントにも記載してください。

MATOME
まとめ

法整備や流通のシステムが進んだことにより、私たちは自身で食べ物の食毒を判別しなくても安全な食事を摂れるようになりました。しかし、つい数世代前まで、日本人も自身の感覚に頼って食物の安全性を確かめていました。日本国内にあっても野生の動物たちは日々、食物を探し当てて、食べられるかどうかを確かめています。自分の口にするものの安全性を確かめたり、加工して高めるのは、生き物が命をつなぐうえで必須の技術です。野外料理は現代人から失われつつある食に関するサバイバル能力を取り戻す良い機会といえるかもしれせん。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性5
4知性
2感性
アクティビティ
食べる
環境
山 ・ 川 ・ 森 ・ 海
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
小学生高学年以上
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