ホールアース自然学校理事。富士山麓をガイドして15年。田貫湖畔に環境省が設置した自然学校第1号「田貫湖ふれあい自然塾」のチーフインタープリターとして、身近な野生生物の生き様や人とのつながりを伝えることなどを通じて、自然と人とをつなぎ、身近な自然の見方を変えるきっかけ作りをしている。
その他、様々な企業・行政と自然を知る、伝える人になる、自然を守る・活用するなどの企画・実施に忙し楽しい毎日。
今回オススメするのは「秋の鳴く虫さがし」です。夜、耳を澄ませば、虫たちの鳴き声が心地よく聞こえてくる秋。いったいどんな虫がどんな姿で鳴いているか、気になりませんか?夜、自分の耳を頼りにしながら、ライト片手に探し回るスリル。誰かと行った方が喜びを分かち合えて盛り上がるので、ひとりじゃない方がオススメです!!(もちろん、お子さんは大人の人と一緒にやろうね!)
まず、虫が鳴いている場所を探しましょう。足元をライトで照らして安全を十分に確保しながら進んでいきます。草むらに入ることになるので、長ズボンがよいでしょう。虫の鳴き声を頼りに進み、音が大きく聞こえる方へと近づいていきます。虫たちに悟られないように、気配を消してゆっくり歩きます。
虫の音を聞いてみてください。大きくて直線的な音を出すのがキリギリスの仲間。比較的見つけやすい種類で、色は緑色のものが多いです。一方、音にふくらみがあるのがコオロギの仲間。どこにいるのか見つけるのが大変な仲間です。音を頼りに進んでいっても、さっきまで右の方が大きく聞こえていたかと思いきや、途端に左が大きく聞こえるようになったりして、場所を特定するのが難しい。スズムシなどもこの仲間。茶色や黒のものが多いです。
さあ、あなたはどちらに挑戦しますか?
虫のすぐ近くまで来て、ライトを当てて探していると、気配を悟られて鳴き止んでしまうことがあります。でも、大丈夫。いったんライトを消して、じっと待ちます。すると、警戒が解けたのか、次第に鳴き始めてチャンスが再びやってきます。そうやって見つけた時の喜びはとても大きいもの。虫が翅を動かす姿は健気でかわいいものです。動かしているように見えないほどの速さで翅をこすり合わせ、いい音色を奏でています。苦労するほど、見れた時の喜びは大きいですよね!
鳴き声を録音したり、姿を写真に収めて、調べてみると、その虫の正体がわかります。そうして正体をひとつひとつ突き止めていくと、あなたも鳴き虫博士になれるかもしれません。
鳴いている声をオス、メス聞き分けること、あなたにはできますか。答えは、できます。ただ単にメスが鳴かないだけなんです。だから、鳴いているのは全部オス。すると、皆さんは「な~んだ!」と言うでしょう。でもなぜメスは鳴かないのでしょうか。鳴いている理由はさまざまありますが、一番は「求愛」のためですよね? そう考えると、人間の世界では女性からも告白することがあります。それなのに虫の世界では、なぜメスから求愛の鳴き声が聞こえないのでしょう?これは、小さな生き物の気持ちになって考えるとわかります。音を出せば、ステキな異性に届くばかりでなく困ったことも起きてしまいます。つまり、鳴くというのは天敵に見つかって食べられてしまう可能性もある危険な行為なのです。もしメスが鳴いてメスばかり食べられてしまったら…子孫繁栄が滞ってしまうかもしれません。なので、虫の世界ではメスは目立った行動を取らないのです。
こういった話をみんなとすれば盛り上がるでしょう。
ちなみに鳴く虫の声を美しいと感じるのは、アジアの人だけらしいのです。欧米人には残念なことに、虫の声は雑音としか聞こえないそうです。逆に、日本では江戸時代から「鳴く虫売り」という職業があったとか。美しい音色を聞くたびに、ああ、日本人でよかったなぁと思います。さあ、今晩、誰かと一緒に虫たちが恋の歌を唄う姿を探しに行きませんか?