ワイルドライフクリーターとして様々なメディアで活動中。ブッシュクラフトやサバイバル術、狩猟、DIYに造形が深い。フェールラーベン、Fedeca、ジールオプティクス、Bear tope等のアンバサダーやテスターをしている。著書にアウトドア刃物マニュアル、サバイバル猟師飯(誠文堂新光社)がある。アウトドア、ブッシュクラフトスクールも主催している。Youtubeチャンネル荒井裕介Youちゃんねる。Youtube https://www.youtube.com/channel/UC44o83YZz4HXFnp85V8u3nQ
原始からある生活術「焚き火」!
キャンプや野外活動ではなくてはならない存在ですが、何もないところから火を起こし、上手く火を扱うにはちょっとしたスキルが必要です。
「着火、焚き付け、細薪、薪」と焼べて、火種を次第に大きく育てる焚き火ですが、実はいかに熱を閉じ込め酸素を効率よく送るかがカギになります。そのことを意識しながら、火床をつくり火を育てると、思い通りに焚き火が操れるようになります。焚き火の基本は熱を逃さないこと!
ここでは、キャンプ初心者でも、野外環境で特別な道具を使わずにできる、4つのブッシュクラフト的焚き火術を紹介します。
4つのブッシュクラフト的焚き火術
・基本編
・ディッキングファイヤー
・簡易ダコタファイヤー
・アップサイドダウン
いずれも「熱を逃さない」基本的な原理は同じで、環境や目的に合わせた火床のつくり方を変えたものです。異なる焚き火スタイルを知ることで、焚き火の基本的な原理や手法が身につき、環境や目的に合わせた焚き火選びができるようになります。
※このHow toでは、焚き火スタイルを紹介することを目的にしているため、燃料集めや着火については詳しく触れていません。知りたい方は、他の記事でも紹介されているので、参考にしてみてください。
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/123
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/63
※ここでは、直下型焚き火を例にしていますが、キャンプ場や施設によっては直火を禁止しているところも多くあります。実施する前には必ず施設のルールを確認しましょう。もし直火がダメな場合でも、焚き火の原理については焚き火台を使ったものにも応用できるので、ぜひ参考にしてください。
まずはじめに紹介するのは、平らな地面に薪で火床をつくり、その上で火を育てる「基本編」です。この焚き火術は、地面が乾いていて風も穏やかな日に最適です。平らな地面でできるので、地面を掘ることのできない岩場や砂利の上でもおすすめ。
はじめに(1)のように、平らな地面に薪を数本並べて火床をつくり、その上にクロスした棒を設置します。このように、薪で火床をつくると、火種の熱が地面に逃げることを防いでくれるので、熱が蓄えられ燃えやすくなります。
次に(2)のように、クロスした棒の中央に火種をセットします。火種は小枝をナイフで削って先端を羽毛のようにした「フェザースティック」を使用しています。火種に、ファイヤースターター(メタルマッチ)などで着火。火がついたら(3)のように、細い焚き付けを揃えて、火種に対して斜めに焼べていくきます。次に細薪を焚き付けと逆側から、できるだけ密集して同じ向きになるように焼べていきます。
焚き火の基本は熱をこもらせることにあります。火種の熱を逃がさないように、焚き付けや細巻きはできるだけ密集して同じ向きになるように焼べるのがポイント。そうすることで薪を温め、燃焼ガスの発生を促し、火を移りやすくします。
火がついてきたら(4)のように、クロスに組んだ棒を少し持ち上げます。これにより、適度に火床に酸素が供給され、火を回すことができます。この仕組みは、直接火が付いた薪に触れることなく、形を崩さず下から酸素を取り込むことができるので、かなり便利です。また、間違っても熾火ができる前に、フイゴやうちわなどで冷たい空気を送り込まないようにしましょう。基本は熱を逃さないこと、火が付いたら効率よく酸素を送ること!
最後に、細薪に火が移ったら(5)のように中薪を投入し、火を育てていきます。
次に紹介するのは、地面に穴を掘り火床をつくる「ディッキングファイヤー」です。通常の焚き火と違い、地面に鉢状の穴を堀り火床として使います。穴を使うことで、熱を火床に蓄えやすくし、しっかりと薪に熱を伝えることができます。また、火床か地面の下にあるので、風の影響を受けにくく、風の強い日にもおすすめです。
はじめに(1)のように、スコップや木片などで、地面にすり鉢状の穴を掘り火床をつくります。サイズは、大きな両足が入る程度が目安。
次に(2)のように、穴の中央に火種をセットし、ファイヤースターターなどで着火します。火がついたら(3)のように、基本編と同様に細い焚き付けを同じ向きに揃えて焼べます。火が移ったら、細薪も同じ向きに束ねて密集するように焼べます。
さらに(4)のように、細巻きに火が移ったら中薪を焼べます。熱がすり鉢状の火床にたまり火力が増していきます。火が安定すると、薪の下には熾火がたくさん溜まっている状態になります。
この焚き火術は、地面を掘る手間はありますが、熱を蓄えられるので火床が冷めにくく、薪に効率よく熱を伝られるので失敗も少ないです。また、風があるときでも熱を奪われにくいというメリットがあり、片付ける際は炭を埋設しやすいのでおすすめです。
次に紹介するのは、先ほどのすり鉢状の火床に、酸素供給する仕組みをつけた「簡易ダコタファイヤー」です。簡易的ではありますが、ダコタファイヤーやロケットストーブ同様に吸気口をつくることにより、一定の酸素供給をあたえ燃焼を促進します。そのため、完全燃焼し煙が少ないのが特徴。薪の燃焼も早く火力を得やすいので料理向けの焚き火と言えます。
はじめに(1)のように、先ほどのディッキングファイヤーよりも少し長めに穴を掘り、火床をつくります。そこに、適当な太さの枝を置き、土をかぶせて足で踏み固めます。
次に(2)のように、固めた土を崩さないように枝を抜きとり、火床の底に吸気口をつくります。この吸気口を使って酸素を送り込むことで、燃焼を促進します。
火床ができたら、ディッキングファイヤー同様(3)のように、火床に火種を入れて着火し、焚き付け、細薪の順に密集して同じ向きになるように焼べていきます。細薪に火がついたら(4)のように、中薪も焼べます。
本燃焼がはじまると(5)のように、吸気口から空気が流れ込み、安定して燃えるようになります。薪の燃焼も早く火力を得やすいので、アウトドア料理にはおすすめです。準備に少しプロセスは多いですが、燃焼を維持しやすいので初心者にも最適な焚き火と言えます。何より煙が数ないのが嬉しいです。
最後に紹介するのは、薪を積み重ねて火床をつくり、上から燃焼させる「アップサイドダウン」です。太い薪を上から燃やしているかのようにじっくり燃え、通常の焚き火とは逆に火が移ります。雪上などの地面が濡れている場合でも有効な手法です。
はじめに(1)のように、薪を同じ方向にしっかりと積み重ねます。上手く積み重ねられない場合は、太めの薪を下に置くと積みやすいです。積み上がった薪の上を火床にして、火を育てていきます。基本編同様、薪で火床をつくるので、火種の熱が地面に逃げることを防ぎ、燃えやすくなります。
次に(2)のように、高く積んだ薪の上に火種を置き、その上に焚き付け、細薪の順に密集して同じ向きになるように置いていきます。そして、火種に着火。
焚き付けの熱が薪に伝わり燃焼が開始し、(3)のように薪の上から下方向に順に火が燃え進みます。薪が密集しているので、まるで丸太を燃やしているようにじっくりと時間をかけて燃焼します。
長時間じっくりと燃えるので、料理にも最適。4、5枚目の写真は、アップサイトダウン焚き火を活用して料理をしています。直接薪の上にクッカーを置くことも、トライポットと組み合わせてることもできます。
また、就寝時の焚き火としても最適で、タープ泊のキャンパーやブッシュクラフターにはおすすめです。
焚き火を楽しんだらしっかりと後始末をするのが鉄則です。燃料は出来るだけ燃やしき
り、燃えさしはスコップやフライパンに集め、水に浸けて消火します。ここで、しっか
り消火しないと、再び燃えることがあるので、水につけて十分に温度を下げるようにし
ましょう。そして、必ず持ち帰って再利用するか、燃えるゴミなどで処理しましょう。
回収できないほど小さな灰などは、水をかけ消火し、上から土を被せ酸素を遮断しま
す。そして、立ち去るときは、原状復帰を心がけるようにしましょう。
いかがでしたか?焚き火に挑戦し、上手くできたときには写真を撮って、ぜひ『やった!レポ』に投稿してください。気づいたことや、苦労したことなどあれば、ぜひコメントにも書き込んでください。
焚き火の基本的な原理は、掴んでいただけましたか?
焚き火の基本は熱をこもらせること!熱を逃さないための火床をつくり、火種の熱を逃がさないように、焚き付けや細巻きはできるだけ密集して同じ向きになるように焼べていきます。そうすることで薪を温め燃焼ガスの発生を促し火が移りやすくします。そして、火が付いたら、効率的に空気を送り込むのがポイント。
ここでは、原理を抑えた4つの火床を紹介しました。環境や目的に合わせて使い分けができるので、ぜひ挑戦してみてください。