大学では農学部で食品の研究を行い、卒業後は大手コーヒー焙煎会社に就職。東日本大震災を機に、食を探求しその楽しさを発信するために転職し、大規模貸し農園事業を展開。現在はあらゆる自然遊びをサイエンスの視点から語るライターとして活動。狩猟も得意で銃砲店のスタッフとしても活動している。
千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
WILD MIND GO!GO!アンバサダー
たくさん運動をしたり、一所懸命勉強すると、妙に甘い物が食べたくなる時がありますね。なぜでしょうか?私たちが活動するためのエネルギー、その基本物質は糖分です。動物に限らず、それは植物も同じです。生き物のエネルギー源となる糖分、その多くは、自然界ではデンプン(炭水化物=糖質)として存在しています。デンプンを摂取するとそれを分解する消化酵素が出て、糖分に変換=糖化します。植物の種子であるお米や麦なども、発芽の瞬間に酵素を出し、自らのデンプンを分解しエネルギーに変えます。
この仕組みを利用すると、いつも食べている野菜をより甘くすることが可能です。今回は、ジャム作りを通して、糖化のチカラを体験してみましょう。
※注意事項
・甘酒を仕込む際は水筒や魔法瓶に書かれている注意書を守って使用しましょう。
・調理をする際は、やけどなどに十分注意して、必ず大人と一緒に作業しましょう。
【種甘酒作り】
乾燥米麹
100g
さつまいも
150g
水
300cc
計り
ボウル
温度計
水筒(容量600cc以上、保温6時間以上のもの)
【ジャム作り】
鍋
木べら
種甘酒
ジャムを入れる保存瓶
植物が持つデンプンを糖化させる酵素を、β-アミラーゼと言います。酵素は一定の条件下で発現し、米や麦などの穀物の種子、さつまいもや大根などに多く含まれています。
甘酒作りや味噌作りで活躍した麹にも、実はたくさんの酵素が含まれています。これはα-アミラーゼと言います。麹が生み出す酵素は、植物が持つ酵素より濃度が濃く、今回は、麹をベースに糖化をさせます。
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麹以外にアミラーゼを多く含むものとして、麦芽(モルト)があります。この麦芽も、加水して60度で糖化させることでジャムが作れます。日本のお酒は麹から、洋酒は麦芽(モルト)から作られているのが多いのも納得ですね。
基本レシピは甘酒作りと同じです。ご飯を野菜に置き換え、少し量を減らします。麹に、さつまいもやカボチャ、栗などデンプンを持つ野菜を加えると、酵素のチカラで一緒に糖化します。ちなみに、甘酒をジャムにしてももちろん美味しいです。
今回野菜は、さつまいもを使います。しっかりと蒸して、ミキサーなどでペースト状になるまで練ってください。温度が60度以下に下がったら水を入れます。再度加熱して60度になったら火を止めて、麹と混ぜます。よく混ざったら水筒に移して、8~10時間ほど寝かせましょう。
麹と一緒に糖化させる野菜はデンプンを多く含むものがオススメです。さつまいも、じゃがいも、栗、かぼちゃ、麦などが良いでしょう。どれもしっかりと火を通し、ミキサーなどで細かく砕いて使いましょう。
さつまいも入りの甘酒ができました!このまま飲んでもとても美味しいですが、今回はこれをジャムに仕上げます。
甘酒を鍋に入れ、焦げないように弱~中火で煮詰めます。糖分は焦げやすく苦味のもとになるので、ヘラでよく混ぜながら作業をしましょう。量にもよりますが、およそ30分~1時間ほど煮詰めるとだんだん粘り気がでてきます。糖分は冷めると固くなります。時折、火を消して粘り気を確かめながら進めましょう。
こうしてジャムが完成したら、熱いうちに保存瓶に移します。粗熱をとってから冷蔵庫で保管しましょう。糖分は天然の防腐剤として働きます。糖度が高ければ日持ちも良くなります。甘酒を煮詰めたもので2週間ほど、液体のみを煮詰めたもので1ヶ月ほどを目安に食べきりましょう。
今回は麹やさつまいもごと煮詰めていますが、鍋にかける前に布で絞って、その液体だけを煮詰めると、より純粋な糖分を持つジャムを作れます。こちらもぜひ試してみてください。
出来上がったジャムとバケットを持って外へ出かけましょう!私は畑仕事の合間にいただきました。
さっそく試食!ん~~甘い!でも、市販のジャムに比べると爽やかな甘さです。実は酵素によって作られる糖は麦芽糖といって、一般的なジャムに使われる砂糖=ショ糖とは種類が違います。お砂糖の甘みは口に含んだ瞬間から感じますが、麦芽糖はゆっくりと甘みが広がっていきます。運動の疲れがすっと取れる美味しさです。ぜひ皆さんもアウトドアのお供に、麹ジャムを持って行ってはいかがでしょうか♪
麹ジャムを作ったらぜひ「やった!レポ」に投稿しませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
今回の酵素と糖化の働きは、科学の基本的な知識です。科学技術が発達するはるか昔から、私たち人間は、生きるためにこうした技術を経験から見つけ出し利用してきました。でも、現代人の私たちは、必要に迫られなければ、学んだはずのこうした知識もすぐに忘れてしまいます。だからこそ、遊び心を持ってこうした体験を皆さんにして欲しいと思います。成功するより、失敗する方が何倍も自分のためになり、面白いのだと気づくはずです。
失敗を繰り返したうえの成功は、体験がしっかりと身につき、そうそう忘れることはありません。ぜひ、新しい発想で糀ジャムを作ってみてくださいね♪