大学では農学部で食品の研究を行い、卒業後は大手コーヒー焙煎会社に就職。東日本大震災を機に、食を探求しその楽しさを発信するために転職し、大規模貸し農園事業を展開。現在はあらゆる自然遊びをサイエンスの視点から語るライターとして活動。狩猟も得意で銃砲店のスタッフとしても活動している。
千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
WILD MIND GO!GO!アンバサダー
アウトドアの楽しみのひとつは、何と言っても野外で楽しむ料理。普段料理をしないお父さんやお子さんも、キャンプでは積極的に楽しんでいるのではないでしょうか。でも手の込んだレシピは作るのが大変・・・そこで今回のHow toでは、どんな料理も美味しさを倍増させる万能調味料『味噌』を手作りしちゃいます。
「味噌は医者いらず」「味噌汁1杯三里の力」など、健康食としても注目されてきた味噌ですが、原料は、大豆と麹と塩のたった三つだけ。麹の中に含まれる酵素が大豆を分解し、自然に存在する各種細菌が美味しい味噌に作り変えていきます。
完成までには8ヶ月ほどかかります。ゆっくりと時間をかけて味噌の色や香りが変化していく様子を、観察して待ちましょう!
[食材]
乾燥大豆(黒大豆も可)
300g
乾燥麹
250g
塩
130g
[道具]
1L以上の円筒型タッパ(百円ショップなどで購入可能)
重石用の塩(市販の食塩200gを薄手ビニール袋に入れる)
ラップフィルム
ウォッカ(消毒用)
200ml程度
霧吹きボトル(ウォッカを入れて準備)
キッチンペーパー
厚手のビニール袋(茹でた大豆を潰す用)
*厚み0.05mm、サイズ30cm×30cm以上が便利
温度計
ボウル
鍋(容量1.5L程度)
味噌づくりに必要な食材は3つ。米麹、大豆、塩です。
米麹はスーパーなどで簡単に入手できる、乾燥麹を使います。大豆は一般的な乾燥大豆を使いますが、黒大豆でも美味しくできます。塩は普通の食塩でOK、こちらもお好みで天日塩などを選んでください。
まず、使用する乾燥大豆を300g計量し、仕込み作業の15時間前に水につけてください。大豆は水を吸うと、およそ2倍程度に膨らむので、水につけた時に水かさが大豆の倍以上になるようにしてください。
使用する道具を準備し、手をしっかり洗ってください。
市販の乾燥麹を250g計ります。袋から出すとブロック状になっているので、ちぎって計量してください。塩も130g計量します。
味噌容器はよく洗い水気をふき取ってから、内側に霧吹きでウォッカを吹きかけ消毒してください。そのまま蓋をして置いておきます。
味噌作りには雑菌が大敵です。作業の前に手洗いうがいをしっかりして、臨みましょう。
大豆がしっかり吸水したら水を捨て、鍋に移してから新たにひたひたになる程度に水を足し、中火で2時間ほど煮ます。
大豆を一粒取り出して親指と小指で挟み、簡単に潰れるくらいの柔らかさになったらOKです。火を止めてください。
・乾燥大豆をひとつまみ残しておいて、吸水後の大豆と大きさを比べてみましょう。なんで形が変わるの?大豆に限らず、乾燥した植物の種子は厳しい季節を乗り切る休眠状態にあります。水につけることで細胞が水分を取り戻し、本来の豆の形に戻ります。
・小さい鍋だと豆の煮え方にムラができてしまいます。余裕がある大きさの鍋で煮ましょう。
・やけどに注意しましょう。
大豆を煮ている間に、固まりになっている麹をバラバラにほぐします。麹の塊をひとつまみ手に取り、ボウルの上で手をこすり合わせるようにすると、麹の力でくっついていた米粒が剥がれて崩れていきます。十分にほぐれたら、規定量の塩を入れ、よく混ぜ込んでください。
大豆が煮上がったら、まず最初に、鍋から煮汁を50ccほど取り分けてください。(種味噌の水分調整用に使います)
次に、大豆をザルに上げ、水気を切って袋に移します。飛び出ないように袋の口を押さえるか、輪ゴムなどで軽く留め、熱い状態のまま袋の上から瓶で叩いて大豆を潰していきます。
大豆が潰れてペースト状になったら、温度を測ります。60℃以下であればOK、それ以上の場合は少し冷ましてください。
この時の硬さが、市販の味噌より少し柔らかい程度であればそのままで、少し硬いようであれば先に取り置いた煮汁を入れて調整してください。
こうして適温になったところに今度は塩きり麹を入れて、よくもんで均一に混ぜれば、種味噌の完成です!
・大豆は熱い状態なので、やけどに注意してください。
・叩く瓶が割れないよう注意してください。
・大豆はきれいに潰し切れなくても大丈夫です。(豆の形が残った味噌になります)
容器の蓋を開け、アルコールを十分に拭いて、まず種味噌を手でひとつかみ(おむすび大)入れます。容器の底に均一に押し付けて、空気の層がなくなるようにしてください。大人の手であれば、指の背を使って回すように押し付けていくと、きれいに詰められます。容器の裏から確認し、空気の固まりがないのを確認したら、同じように上から詰め込んでいきます。
種味噌を全て詰め終えたら、表面をきれいにならします。この時、中央に向けてなだらかな山型になるようにしてください。
ならし終えたら、ウォッカを含ませたキッチンペーパーで、容器の内側や周りに着いた種味噌を拭き取ります。
最後にウォッカをひと拭き、味噌の表面にかけて、その水分を利用して上からぴったりとラップを貼り付けます。(空気の層ができないように)その上にキッチン袋に入れた塩の重石を乗せ、空気の層ができないように広げて押し付けます。
最後に蓋をして、仕込み日を記入すれば完成です!
熟成中に発生するカビは空気を好みます。味噌が空気に触れないようにすることで、発生を抑えられます。
冬に仕込んだ味噌は少しずつ醗酵し、春を越えたあたりから急速に活動が進み、夏頃にピークを迎えます。その頃にはぐっと色も茶色くなって、10月初旬頃から食べられるようになりますが、醗酵はそのまま続き、だんだんと香りや味が変化していく様子も楽しめます。
前回の『甘酒づくり』では、麹の持つ酵素がデンプンを分解し、糖化させる力を利用しました。味噌の場合は、それに加えてたんぱく質も分解することで旨味が生まれ、さらに時間をかけてそれらを餌に、空気中に存在する耐塩性の乳酸菌や酵母菌が活動して、香りや酸味などを生み出していきます。そのため、熟成の浅い味噌の方が旨味や甘味が強く、深くなるにつれ風味と酸味が強くなっていきます。
市販の味噌には、白味噌、赤味噌、麦味噌など色んな種類がありますね。これらは麹に分解させる原料(大豆、麦など)と、麹の割合、そして熟成期間で決められます。
今回はシンプルな田舎味噌(一般的な米味噌)を作りましたが、慣れるとどんな味噌でも家で仕込むことが可能です。
昔から『手前味噌』という言葉があるように、自分で作った味噌の味は格別です! ぜひこのHow toを参考に、じっくり上手に味噌を育ててくださいね。
【手作り味噌の上手な育てかた】
・仕込んだ味噌は、直射日光が当たらない常温の室内に保管してください。冷蔵庫などで保管すると上手に醗酵しません。
・味噌の表面にふわふわしたカビが生えてくることがあります。心配せず10月までそのままで保管してください。
・10月に入ったら、一度蓋を開けて表面のカビを取ります。スプーンなどで簡単にはがれるので、すくって捨ててください。
・まれに、味噌そのものが、容器の下から押し上げられることがあります。その場合は、重石ごと上から手で押し込んで、中のガスを抜いてください。
・容器の側面に、細かい白い粒が発生することがありますが、これはアミノ酸の結晶です。気にせずお召し上がりください。
・完成した味噌はまだ淡い色をしています。なんで色が茶色くなるの?それは味噌の中の糖分とアミノ酸などが、メイラード反応(褐変)という反応を起こしているからです。
・夏頃になると、味噌の上面に液体が浮いてきます。この液体はたまり醤油と言われ、現代の醤油の原型です。醤油は味噌を作る過程で生まれたんですね!
味噌作りをしたら、『やった!レポ』に投稿して、みんなと体験をシェアしませんか?また、以下のイベントでこのHow toを体験できます!イベントに参加して『やったレポ』を投稿しませんか?
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『甘酒作り』に続き、醗酵How toをご紹介しました。仕込んだ味噌は、塩や微生物に守られながら、8ヶ月ほどかけて腐らずに醗酵していきます。でも水分を含んだ食べ物が、常温で何ヶ月も何年も置いて食べられるなんて、ちょっと不思議ですよね。
それもそのはず、味噌はもともと醤(ひしお)という塩漬けを醗酵させた保存食を起源としていて、日本ではなんと、縄文時代の遺跡から似たものが発見されているそうです。
自然の恵みは、たくさん得られる時もあれば、何も得られない時もあります。冷蔵庫や缶詰がない時代から、人は自然の中で食べ物を保存する方法を編み出してきたのですね。
皆さんは、山で木の実や果実をたくさん見つけたとき、海で思いもよらず魚がたくさん釣れたとき、それらをどうしますか?そのとき必要な分だけ持ち帰るのも、もちろん良いでしょう。でも、伝統保存食には、旬の恵みを余すことなく頂く知恵がたっぷり詰まっています。
このHow toをきっかけに、『保存して食べる』ことに注目してもらえれば嬉しいです。
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