1971年地球の日(4/22)に生まれる。1996-2004年カナダやアメリカを何度も訪れ、雪山登山、ロッククライミング、野外教育法、ネイティブアメリカン古来の教え、大地と共に生きるサバイバル技術等を学ぶ。
2001年よりWILD AND NATIVE
(http://wildandnative.com/) 主催、2013年一般社団法人危機管理リーダー教育協会(http://cmle.jp/) 設立。ネイティブアメリカンの大地と共に生きるサバイバル術、アウェアネス等を、一般の方から自衛官警察官まで共有。
最新著書「キャンプでやってみる子供サバイバル」(http://amzn.to/2svhoiD)
ナイフ一本、もしくはそれさえも無い状況で、木材に「窪み」を彫りたい。そんな時に活躍するのが「コールバーニング」と呼ばれるテクニックです。文字通り、コール(燃えている炭)で、バーニング(燃やす)することで、木片の一部分を焦がし、そこを削って行きます。本来は燃えている石炭のことを coal というようですが、今回のように石炭を使わずともコールバーニングと呼ばれます。このテクニックを使えば、食器やカップになり得るくらいのしっかりとした窪みを作ることができます。
今回はその中でも比較的簡単なスプーンの作り方をご紹介します。紙ヤスリなどで形を整えすぎずに、敢えて不恰好なままで仕上げるのも味があっていいと思います。
※火を扱える場所で行ってください
コールバーニングで使うのは燃えている炭です。燃えている木ではありません。炎は出ていないけど、赤く、高熱を発する炭です。薪に火をつけると炎が上がり、その炎が収まってきて落ち着いた頃のものを使います。まずはその準備として薪に火をつけて、燃えている炭ができるまでの時間を有効に活用しましょう。一度に効率よくコールを作るために薪の組み方もちょっと工夫します。
写真を参考に、まず横に枕木を二本置きます(写真①)。
その上に薪をイカダ状に並べます(写真②)。
薪を組み、着火します(写真③)。「女子でも簡単!ファイヤースターターで火おこし」を参考にしてみましょう。
こんな状態になるまで燃やします(写真④)。
その間、他の作業をすすめましょう。
■女子でも簡単!ファイヤースターターで火おこし:
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/123
火の下にも燃料を置いてやることで、焚き火の温度も上昇しやすくなり、またコールのベッドが出来やすくなります。枕木を置かないと、特に短時間の焚き火では燃え残りが生じやすいでしょう。
材は、いつものようになるべく節の少ないものを選びます。今回も、天然の抗菌材である精油を含んだ、杉の枯れ枝をチョイスしました。ナイフを使って好きな長さに切り出してみましょう。「ブッシュクラフト入門#1」を参照してください。
■ブッシュクラフト入門#1 ペグ作りで覚えるナイフの使い方:
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/86
素材に関して
・口に入れるので、毒ではないものを選びましょう。私が基準にしているのは、木の実などその一部分が食べられたり、お茶として利用されているものはOKとする。
・市販のものであれば、防腐剤などが注入されていないものを選びましょう。
・今回はなるべく削る手間を省くため、完成イメージのスプーンサイズに近い大きさの材を選びました。
どちらかの端、なるべく節の少ない方を選んで、そこにパワーカットを使って「受け」を掘りましょう。「ブッシュクラフト入門#1」を参照してください。「受け」は、コールが乗っかる場所となり、最終的にはこの部分がスプーンのお皿部分になります。
■ブッシュクラフト入門#1 ペグ作りで覚えるナイフの使い方:
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/86
ナイフの「腹」の部分を上手に使い、少し逆アーチ型に彫り込んであげると、それだけでもスプーンぽくなります。写真のように、形を整えるだけでも、充分スプーンとして機能します。
いよいよコールバーニングの開始です。真っ直ぐで使いやすそうな枝を二本、箸のように使い、コールを拾います。それを「受け」の上に乗せて、上から枝などで押し当てながら、コールと「受け」の接してる部分をめがけて息を吹きかけます(写真①)。「受け」がしっかりと焦げるまで、息を吹きかけ続けましょう(写真②)。まずは「受け」全体の真ん中あたりに少し窪みをつける程度。そこから窪みをまわりに広げていきます。
トングがあると無茶苦茶活躍します!「ブッシュクラフト入門#8」を参照に、是非用意してみましょう。
■ブッシュクラフト入門#8 まわりにある素材でトングを作ろう!:https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/129
息を吹きかけ過ぎると炎が上がることがあります。それによりクラック(割れ目)が生じることもあるので、なるべく炎を出さないように心がけましょう。
焦がした部分は柔らかくなっていて、簡単に削ぎ落とすことができます。削りやすそうな石を探して、石器として使ってみましょう。今まで気にならなかった石の形が急に意味を成しはじめ、石との関係が築かれます。納得がいく窪みの形になるまで、この工程を繰り返します。
・黒い部分だけでなく、茶色くなっている部分も、多少固さがありますが削ぎ落とせます。茶色の部分は多少なりとも炭化しているため、スプーンの表面としてはあまり適さない固さかと思います。これでもかと言うくらい一生懸命削ぎ落としましょう。
・見た目よりも結構奥まで「焦げ」は達しています。調子に乗って焦がしていると、底が抜けてしまったり、壁の部分を焼いてしまったりと、取り返しのつかないことになります。マメに削って、現状を見てあげるといいでしょう。
納得がいく窪みの形に出来上がったら、あとは思うままに、自分の理想とするスプーンの形に削っていきます。削り方にルールはありませんが、今回の手順を、時系列順に写真で並べるので参考にしてください。
持ち手の上下を平らに削る(写真①)。
持ち手の左右を削る(写真②)。
「くびれ」と「頭」の部分を滑らかに削る。この時もナイフの「腹」の部分を使ってあげるとやりやすい(写真③)。
窪みの角をナイフの先を使って面取りすることで、計量スプーン的な感じから、一気に普通のスプーンのように変わる(写真④)。
背面側も滑らかに削ってスプーンの形に仕上げる(写真⑤)。
最後にペーパーをかけて滑らかに仕上げるのも楽しいですし、あえて凸凹で不恰好な感じを残すのもいい味が出ます。私が好きなのは、先の滑らかな石で表面を押し込みながら擦って、表面を固く、滑らかに磨く(石磨き)ことで仕上げる方法です。作りながらその時の感覚を大切にして、その状況にあった形や雰囲気に仕上げましょう。
写真は、今回作った、ナイフの荒削りで済ませたもの(左)と、ナイフで丁寧に削って仕上げたもの(右)です。参考にしてください。
オリーブオイルを塗り込んで乾かすという工程を、何度も繰り返して仕上げる方法もあります。
コールバーニング&石器を使ってオリジナルのスプーンを作ったら「やった!レポ」に投稿して、みんなとシェアしませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
出来上がったら是非実際に使ってみましょう。そうすると、更なる理想の形が見えてきます。お手入れの方法は、使用後、杉の生葉などをブラシ代わりにして水洗いします。天日で乾燥させるか、焦げないように炎に当てて乾かします。次に使用する時も、消毒として事前に軽く火に炙ってから使います。油分が抜けて水を弾かなくなったら、オリーブオイルをまた塗り込んであげます。カビが生えたら酢で洗ってあげるのが効果的です。
焦がしては石で削るという行為を繰り返すこのコールバーニングは、凄くハマる作業です。ゆっくり時間をかけて作るのがコツ。火と、木と、石と、じっくり戯れることをイメージしながら作業しましょう。慣れてきたら、大きな窪みを掘るのにチャレンジ!カップや器を作ってみるのも凄く楽しいです。是非トライしてみてください。
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気が向いたら是非手にとってみてくださいね!