大学では農学部で食品の研究を行い、卒業後は大手コーヒー焙煎会社に就職。東日本大震災を機に、食を探求しその楽しさを発信するために転職し、大規模貸し農園事業を展開。現在はあらゆる自然遊びをサイエンスの視点から語るライターとして活動。狩猟も得意で銃砲店のスタッフとしても活動している。
千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
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秋が深まるにつれ、自然には「落としもの」が多く見つかるようになります。松ぼっくりやドングリなどの木の実、色づいてきれいな落ち葉、そして「鳥の羽」もそのひとつ。体を覆っている羽毛は軽く、風ですぐ飛んでいってしまいますが、大空を飛ぶための羽=風切羽などは重く、鳥が落としたその場に残っていることがよくあります。
また、秋から冬は、夏の間日本より北で繁殖していた鳥が越冬のため日本に渡ってきたり、日本よりさらに南に移動するため通過する季節。疲れた羽を休める水辺では、いろいろな鳥に出会うことができます。拾った鳥の羽から、彼らの生活や行動を想像してみるのも面白いでしょう。
このHOW TOでは、身近な公園や水辺に、鳥の落としものである「羽」を探しに出かけ、羽を観察しながら彼らについて想像します。また、拾った羽を活用したクラフト「羽ペン」と「羽飾り」のつくり方も紹介します。
ビニール袋(拾った羽を入れる)
鍋
タオル
ドライヤー
[道具]
野鳥図鑑
[羽ペンをつくる道具]
鳥の羽:軸径3mm以上のもの
カッターナイフ
万年筆用インク
[羽飾りをつくる道具]
鳥の羽:大小数枚
革の端切れ
チロリアンテープ(布テープ)
1mほど
ハサミ
カッターナイフ(または切り出しナイフ)
接着剤
穴あけポンチ(2mm径)
ビニールテープ
まずはじめに、身近な環境で野鳥に出会えそうなところに、彼らの落としものである「羽」を探しに出かけましょう。おすすめは、鳥たちが水を飲んで休むことのできる水辺。水辺には、比較的体が大きい鳥が活動しているので、大きな羽に出会うチャンスも増えます。例えば、池のある公園や、川辺や海辺など、鳥がいそうな場所を想像して出かけましょう。
木の葉の落ちる秋から冬は、木にとまっている鳥たちも見つけやすくなるので、木の上なども観察しながら探しましょう。じっくり観察すると、普段よく見かけるカラスやスズメ、ハトなどの他にも、たくさんの鳥たちが活動いることに気づくはずです。そして、周辺に羽が落ちていないかも、気を配りながら探してみましょう。1枚目の写真は、公園で見つけた羽です。
身近に暮らす野鳥の探し方や、出会える野鳥の種類については、「【連載】バードウォッチング入門」で詳しく紹介されているので、参考にしてみてください。
【連載】バードウォッチング入門#1 鳥が、もっと好きになる!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/128
【連載】バードウォッチング入門#2 「声」を頼りに身近な小鳥に会いに行こう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/138
さて、鳥の羽を拾ったら、落とし主を推理してみましょう。まずは見つけた場所。落としたからにはそこを生活圏にしている鳥でしょう。「大きさ」と「色」「模様」も重要な手がかりになります。周辺で見つけた鳥のサイズや色と比較してみましょう。
池のほとりならば、カモ類なども候補に上がるでしょう。カモ類の多くは、夏の間日本より北で暮らし、寒くなると南下して日本に渡ってくる冬鳥です。日本にたどり着くと繁殖羽に生え変わるので、落ちていることも多くなります。
周辺で、持ち主と思われる鳥が見つからない場合は、持ち帰ってインターネットや野鳥図鑑でも調べてみましょう。持ち主が特定できると、これまで知らなかった野鳥の存在に気づくかもしれません。
3枚目の写真は、いろいろな鳥の羽を並べています。左上からマガモ、カルガモ、コガモ×2、タシギの翼羽でどれも右翼。下2つはキジの尾羽です。
鳥の羽には、体温を維持する「羽毛」、空を飛ぶための「風切羽」や、姿勢制御の「尾羽」など、いろいろな種類があり、それぞれ形も異なります。風切羽は、左翼と右翼で対称のつくりになります。羽は動物でいう毛が進化したもので、中心には「羽軸」と呼ばれる芯があり、そこから「羽弁」と呼ばれる柔らかなファイバー状の繊維が生えています。
風切羽は、飛翔するための羽で、進行方向の羽弁(外弁)は短く、後ろ側の羽弁(内弁)が長くなっています。また、風を掴むために内側に向かって緩くカールしています。
尾羽は、基本的には羽軸を中心に左右の羽弁は同じ長さをしていますが、翼羽と違って羽軸があまりカールせず、まっすぐ伸びているのが特徴です。
鳥の羽は、大空を羽ばたくために最適に進化した自然の造形物。普段近くで見ることのできない鳥の羽も、落としものとして拾った羽をじっくり観察し、どうしてそのような形になったのか想像するだけでも楽しくなるはずです。皆さんも、拾った羽がどの部分のものか、どうしてそのような形をしているのか、じっくり観察してみましょう。
拾った羽を集めて、瓶などに刺すだけでも可愛いですが、いろいろな活用方法があります。ここでは、簡単なクラフトとして、羽ペンづくりと羽飾りづくりを紹介します。
その前に、羽は野生動物の体毛です。あらかじめ、消毒処理をしましょう。鍋にお湯を沸かし、拾ってきた羽をさっと熱湯にくぐらせます。次に、タオルで挟み大まかに水分をとったら、ドライヤーで風を当てながら、指で羽を撫でるようにして丁寧に乾かします。羽が完全に乾いたら、準備は完了です。
ここでは、少し大きな羽(軸径3mm以上のもの)を活用した、羽ペンのつくり方を紹介します。羽ペンは、鉛筆などが生まれる前から活用されてきた文具です。羽柄をペン先に加工し、インクをつけて文字を書きます。毛細管現象でインクを吸い上げ、一度インクを含ませれば、数十文字は書くことができます。
つくり方は簡単。はじめに羽柄の先をカッターナイフで斜めにカットし、ペン先をとがらせます。次に、ペン先の中心に縦に割り込みを入れると完成です。実際に、万年筆用のインクをつけて、文字を書いてみましょう。
羽ペンは、羽軸の太さがある程度ないと折れてしまうため、カラスや中型以上の猛禽類の風切羽、キジの尾羽などがおすすめです。写真では、キジの尾羽を使用しています。指で握るには細すぎるので、あらかじめ麻紐を巻いて握りやすい太さにしています。紐の巻き方は、下記のHOW TOのSTEP8を参考にしてください。
【連載】野生児育成計画#8 五寸釘を七輪で熱してナイフを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/118
次に、拾った羽を組み合わせて、頭や帽子につける羽飾りのつくり方を紹介します。必要な材料は、大小数枚の鳥の羽と、チロリアンテープ(布テープ)、革の端切れ、接着剤です。
はじめに、革を切り出し、羽の接着面を隠すパッチをつくります。ハサミで、革の端切れを3枚目の写真のように、大・小2枚切り出します。この際、革の幅は、チロリアンテープを通せるように、テープの幅よりも太くする必要があります。
次に、切り出した革(大)に、カッターナイフなどで、チロリアンテープを通すための切れ込みを入れます。切れ込みの角に穴あけポンチなどで穴を開けると、布テープの通りがよくなります。さらに、切り出した革(小)にも切れ込みを入れ、コードストッパーをつくります。
次に、好みの羽を組み合わせて、羽飾り部分をデザインします。ふわっとした羽毛を使っても、長い風切羽を使っても可愛いでしょう。はじめは、短く切った粘着テープの上に貼り付け組み合わせを考えます。このテープは仮止めですので、ビニールテープやマスキングテープでもOKです。
羽飾りの組み合わせが決まったら、先ほど切り出した革パッチ(大)の裏側に、接着剤を使って貼り付け固定します。クリップなどで挟みしっかり硬化するのを待ちましょう。
羽が革パッチにしっかり固定できたら、革パッチにチロリアンテープを通し、最後に両端をまとめてコードストッパーに挿して完成です。頭に直接巻いても、帽子に巻いても使えます。ここでは、帽子につけましたが、髪の長い方はヘアバンドとして使ってもオシャレですね。
きれいな鳥の羽が拾えたり、羽ペンや羽飾りがつくれたら、写真を撮って『やった!レポ』に投稿して、みんなとシェアしましょう!新しい発見や、感じたことがあれば、ぜひコメントにも書いてください。
みなさんは、自然の落としもの「鳥の羽」を見つけることができましたか?
ひと口に鳥の羽と言っても、私たちの身近な環境にはいろいろな野鳥が生息していて、一羽の鳥に注目しても、その鳥のもつ羽は、部位ごとに形や色、模様が異なります。偶然に拾った1枚の羽から、その羽の持ち主について推測していくと、たくさんの発見があるはずです。
知識はあなたの自然遊びの楽しみを広げてくれます。公園や自然散策をするときにも、ぜひ身近な野生の住人たちの存在に意識を向けて、観察してみてください。
注意事項
※ハサミやカッターナイフを使用する際は、手を切らないように気をつけましょう。
※私有地や公園など、管理された土地で鳥の羽を拾う場合は、管理者に確認しましょう。
※鳥の羽を触ったあとは、必ずきれいに手を洗いましょう。
※野鳥が生息にいる環境では、驚かさないように注意をしましょう。