2011年の震災を機に、食の安心安全を伝えるために大規模貸し農園の運営を手がけ、2016年春に独立、フリーランスの農園コンサルタントとして活動している。そのかたわら発酵クリエイターとして味噌作りなどの食農イベントも多数開催。農業、狩猟、釣りなど、オールラウンドに自然を楽しむ。千葉県君津市に、未来農場CropFarmを設立。畑を通じて自然教育、食育を発信している。twitterアカウントは@Yuu_Miyahara
秋が深まるにつれ、自然には「落としもの」が多く見つかるようになります。松ぼっくりやドングリなどの木の実、色づいてきれいな落ち葉、そして「鳥の羽」もそのひとつ。体を覆っている羽毛は軽く、風ですぐ飛んでいってしまいますが、大空を飛ぶための羽=風切羽などは重く、鳥が落としたその場に残っていることがよくあります。
また、秋から冬は、夏の間日本より北で繁殖していた鳥が越冬のため日本に渡ってきたり、日本よりさらに南に移動するため通過する季節。疲れた羽を休める水辺では、いろいろな鳥に出会うことができます。拾った鳥の羽から、彼らの生活や行動を想像してみるのも面白いでしょう。
このHOW TOでは、身近な公園や水辺に、鳥の落としものである「羽」を探しに出かけ、羽を観察しながら彼らについて想像します。また、拾った羽を活用したクラフト「羽ペン」と「羽飾り」のつくり方も紹介します。
ビニール袋(拾った羽を入れる)
鍋
タオル
ドライヤー
[道具]
野鳥図鑑
[羽ペンをつくる道具]
鳥の羽:軸径3mm以上のもの
カッターナイフ
万年筆用インク
[羽飾りをつくる道具]
鳥の羽:大小数枚
革の端切れ
チロリアンテープ(布テープ)
1mほど
ハサミ
カッターナイフ(または切り出しナイフ)
接着剤
穴あけポンチ(2mm径)
ビニールテープ
まずはじめに、身近な環境で野鳥に出会えそうなところに、彼らの落としものである「羽」を探しに出かけましょう。おすすめは、鳥たちが水を飲んで休むことのできる水辺。水辺には、比較的体が大きい鳥が活動しているので、大きな羽に出会うチャンスも増えます。例えば、池のある公園や、川辺や海辺など、鳥がいそうな場所を想像して出かけましょう。
木の葉の落ちる秋から冬は、木にとまっている鳥たちも見つけやすくなるので、木の上なども観察しながら探しましょう。じっくり観察すると、普段よく見かけるカラスやスズメ、ハトなどの他にも、たくさんの鳥たちが活動いることに気づくはずです。そして、周辺に羽が落ちていないかも、気を配りながら探してみましょう。1枚目の写真は、公園で見つけた羽です。
身近に暮らす野鳥の探し方や、出会える野鳥の種類については、「【連載】バードウォッチング入門」で詳しく紹介されているので、参考にしてみてください。
【連載】バードウォッチング入門#1 鳥が、もっと好きになる!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/128
【連載】バードウォッチング入門#2 「声」を頼りに身近な小鳥に会いに行こう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/138
さて、鳥の羽を拾ったら、落とし主を推理してみましょう。まずは見つけた場所。落としたからにはそこを生活圏にしている鳥でしょう。「大きさ」と「色」「模様」も重要な手がかりになります。周辺で見つけた鳥のサイズや色と比較してみましょう。
池のほとりならば、カモ類なども候補に上がるでしょう。カモ類の多くは、夏の間日本より北で暮らし、寒くなると南下して日本に渡ってくる冬鳥です。日本にたどり着くと繁殖羽に生え変わるので、落ちていることも多くなります。
周辺で、持ち主と思われる鳥が見つからない場合は、持ち帰ってインターネットや野鳥図鑑でも調べてみましょう。持ち主が特定できると、これまで知らなかった野鳥の存在に気づくかもしれません。
3枚目の写真は、いろいろな鳥の羽を並べています。左上からマガモ、カルガモ、コガモ×2、タシギの翼羽でどれも右翼。下2つはキジの尾羽です。
鳥の羽には、体温を維持する「羽毛」、空を飛ぶための「風切羽」や、姿勢制御の「尾羽」など、いろいろな種類があり、それぞれ形も異なります。風切羽は、左翼と右翼で対称のつくりになります。羽は動物でいう毛が進化したもので、中心には「羽軸」と呼ばれる芯があり、そこから「羽弁」と呼ばれる柔らかなファイバー状の繊維が生えています。
風切羽は、飛翔するための羽で、進行方向の羽弁(外弁)は短く、後ろ側の羽弁(内弁)が長くなっています。また、風を掴むために内側に向かって緩くカールしています。
尾羽は、基本的には羽軸を中心に左右の羽弁は同じ長さをしていますが、翼羽と違って羽軸があまりカールせず、まっすぐ伸びているのが特徴です。
鳥の羽は、大空を羽ばたくために最適に進化した自然の造形物。普段近くで見ることのできない鳥の羽も、落としものとして拾った羽をじっくり観察し、どうしてそのような形になったのか想像するだけでも楽しくなるはずです。皆さんも、拾った羽がどの部分のものか、どうしてそのような形をしているのか、じっくり観察してみましょう。
みなさんは、自然の落としもの「鳥の羽」を見つけることができましたか?
ひと口に鳥の羽と言っても、私たちの身近な環境にはいろいろな野鳥が生息していて、一羽の鳥に注目しても、その鳥のもつ羽は、部位ごとに形や色、模様が異なります。偶然に拾った1枚の羽から、その羽の持ち主について推測していくと、たくさんの発見があるはずです。
知識はあなたの自然遊びの楽しみを広げてくれます。公園や自然散策をするときにも、ぜひ身近な野生の住人たちの存在に意識を向けて、観察してみてください。
注意事項
※ハサミやカッターナイフを使用する際は、手を切らないように気をつけましょう。
※私有地や公園など、管理された土地で鳥の羽を拾う場合は、管理者に確認しましょう。
※鳥の羽を触ったあとは、必ずきれいに手を洗いましょう。
※野鳥が生息にいる環境では、驚かさないように注意をしましょう。