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【連載】隠花植物入門#4 きのこを五感で楽しもう!

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新井文彦

きのこ写真家
見て、触って、嗅いで、食して……もっときのこに親しもう

はるか昔、生物の分類は、動物と植物のふたつに大きく分けられ(現在の分類体系はとても複雑です!)、植物はさらに、花を咲かす高等な植物・顕花(けんか)植物と、花を咲かせない下等な植物・隠花(いんか)植物に二分されていました。隠花植物は、シダ植物,コケ植物,藻類,菌類などを含みます。

明治時代の日本を代表する知の巨人・南方熊楠(みなかたくまぐす)は、博物学、宗教学、民俗学など、広い分野での活躍が知られていますが、植物学、中でも粘菌をはじめとする隠花植物の研究が有名です。

ぼくはきのこや粘菌が大好きなのですが、コケ、シダ、地衣類などにも興味を持っています。そう、それらの生物を、ひと言で表す便利な言葉こそ、生物学的にはほぼ死語となった「隠花植物」なのです。下等だなんてとんでもない。他の生物と同様に、地球生命が誕生して以来、進化に進化を重ねた最新鋭最先端の生物です。

この連載では、毎月第4木曜日 全5回にわたり、いわゆる隠花植物の中から、コケ、シダ、きのこ、地衣類、粘菌をご紹介します。花が咲かないから地味だ、などと思っていたら大間違い。その美しいこと、愛らしいこと……。じっくり観察したら、隠花植物のとりこになること間違いなしです。

【連載】隠花植物入門
#1 めくるめくコケワールドを覗いてみよう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/113
#2 不思議生物 地衣類ウオッチングに行こう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/121
#3 粘菌生活をはじめよう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/130
#4 きのこをとことん楽しもう!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/137

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https://gogo.wildmind.jp/campaign/201708/index.html

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  • ルーペ

  • あるいは、虫めがね

  • カメラ

  • ライト(懐中電灯など)

  • 手鏡

  • 手袋

STEP 1

きのこはどこに生えるの?

  • 落葉を分解するハナオチバタケ
  • 生きた木に寄生するオニナラタケ
  • 昆虫の蛹(幼虫)に寄生するサナギタケ
  • 枯れた木から発生するムキタケ
  • 木々と共生する菌根菌・ベニテングタケ

きのこはカビや酵母と同じ菌類です。植物ではなく、動物に近い生物なので、光合成はせず、外部から栄養を摂取して生きています。

きのこはその栄養のとり方で、枯木や枯葉など生物の遺骸などから養分を吸収する「腐生菌」、生きた植物や動物や菌類にとりついて一方的に栄養を得る「寄生菌」、植物とともにつくった、菌根という器官を通じてお互いに栄養のやりとりをする「共生菌(菌根菌=きんこんきん=)」と、大きく3つに分けることができます。

きのこの「本体」は、地中や枯木の中で伸びる菌糸。通常、私たちの目に触れることはほとんどありません。菌糸は管状の細胞列で、体外に酵素を分泌し、有機物を分解吸収します。わたしたちがよく目にする「きのこ」は、生殖器官である子実体のことなのです。

つまり、きのこが発生する場所は、きのこそれぞれの「好物」がある場所。枯木からは枯木を「食べる」きのこが、昆虫のセミからはセミを「食べる」きのこが発生します。

きのこについては、過去の HOW TO「世にもかわいい毒きのこを探しに行こう!」も参考にどうぞ。
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/95

STEP 2

きのこの姿を楽しもう!

  • 棍棒状のカバイロテングノメシガイ
  • お皿形をしたアラゲコベニチャワンタケ
  • 傘と柄を持つタマゴタケ
  • ホウキのような形のチャホウキタケモドキ
  • 湿度を感じると星形に開くツチグリ

きのこ、というと、多くの人が、傘と柄がある姿を思い浮かべると思います。しかし、きのこの形はもちろん、色や大きさも本当に多種多様です。

例えば、シイタケなど、傘と柄があるきのこは、傘裏のヒダから胞子を放出して、風に乗せて拡散させます(地面に生えているきのこの傘裏を観察する場合、手鏡を使うと便利です)。逆光で背景を暗くして傘を持つきのこを見ると、胞子を放出している姿を確認できるかもしれません。まるい形をしたホコリタケの仲間は、胞子が熟すと、きのこのてっぺんに穴があき、降雨や動物に踏まれた刺激などで胞子を放出します。棒形や皿形のきのこは、表側で形成された胞子が風に乗って飛んでいきます。

きのこは、胞子のつくりかたによって「担子(たんし)菌、子嚢(しのう)菌の2つに分けることができます。担子菌はマツタケやシメジなど、傘と柄を持つ、いかにもきのこらしい形をしたきのこの多くが属し、担子器という特殊な細胞の外側に胞子をつくります。子嚢菌は皿形や棒形など傘や柄を持たないような、きのこらしくない形をしてないものが比較的多く、子嚢と呼ばれる袋のような構造の中に胞子をつくります。きのこを見つけたら、そのきのこがどんな方法で胞子を飛ばすのか、推理してみるのも面白いと思います。そして、ぜひ図書館などで図鑑を調べて、正解を探してみましょう。

きのこの色がどんな役割を果たしているかは、まだわかっていません。

STEP 3

きのこに触ってみよう!

  • 外はカチカチ中はふわふわのツリガネタケ
  • 傘を握りつぶしても元に戻るカラカサタケ
  • 傘裏がスポンジ状のオオダイアシベニイグチ
  • 触れると胞子を放出するタヌキノチャブクロ
  • ハナビラダクリオキンはまるでゼリー

きのこを見つけたら、色や形をチェックするだけではなく、ぜひ、さわって、手触りを確認しましょう。きのこの採取が禁止されてない場所であれば(必ず土地の管理者に確認してください)、手にとってじっくり観察してみましょう。

秋の味覚マツタケは香りや味が話題になりますが、固くてぷりぷりして触り心地抜群。採取するとき、地面からすっぽん、と抜ける感触がまた素晴らしいんです(笑)。イグチの仲間は成熟すると傘裏がスポンジのようにふわふわ。変色するタイプは指で落書きもできちゃいます。また、ナメコに限らず、傘の表面がぬるぬるしているきのこも多くあります(ぬるぬるは虫よけになっているという説が)。ホコリタケの仲間は、幼菌時にはぷるぷるして弾力性があり、成熟すると胞子の放出も楽しめます。サルノコシカケの仲間の多年生のきのこは、多くが、かちかち。きのこらしからぬ感触がグッド。10本のきのこがあれば、10本の触感が楽しめます。

ただし、いま、各地で発生が確認されているカエンタケは要注意。食べたら死ぬほどの猛毒を持つきのこで、皮膚刺激性も高いので決して触らないようにしましょう。詳しくは厚生労働省のサイトをご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000143427.html

STEP 4

きのこの匂いをかいでみよう!

  • 香りと味で人々を魅了するマツタケ
  • アンズのような香りがするアンズタケ
  • 芳香剤のような香りのニオイハリタケ
  • 著しい悪臭を発するサンコタケ
  • アンモニア臭がするキイロスッポンタケ

良い香りがするきのこと言って、まず思い浮かべるのはマツタケでしょうか。「香りマツタケ味シメジ」という言葉をよく耳にしますよね。マツタケの香りの主成分のひとつは「マツタケオール」と言い、1938年に岩出亥之助(農学博士)により解明されました。

アンズタケやホシアンズタケは、爽やかなフルーツ(アンズ)のような香りがします。アクニオイタケ(薬品消毒臭)、クサハツ(古い油臭)は、灰汁匂い、くさい臭いからの命名です。スッポンタケの仲間は、頭部にグレバという胞子を含んだ緑色の物質を分泌しますが、これが、臭いのなんの。アンモニアと人糞が混じったような臭いとでもいいますか、この悪臭で虫を呼び寄せて、体に胞子を付着させて拡散する作戦なんです。そうそう、地中に生息するトリュフの仲間は、あの独特の香りで動物を引き寄せ、虫や動物に食べられることで胞子を拡散します。

いい香りか、臭いかは、人間の主観によるもので、自然界には関係ありません。きのこを見つけたら、とりあえず、香りも確認することをおすすめします。すごく嫌な臭いのきのこに当たってしまったら……。ごめんなさい。

STEP 5

きのこを食べてみよう!

  • 傘の大理石模様が特徴の天然ブナシメジ
  • 枯れた広葉樹から発生する天然シイタケ
  • 天然ものもぬるぬるしているナメコ
  • 見つけたら嬉しさで踊りだす天然マイタケ
  • 人工栽培品と似ても似つかぬ天然エノキタケ

野外で実際に自分が採取した、おいしいきのこを食べるのは格別です。特に秋は、マツタケやホンシメジなど、超一級の食菌が発生します。しかし、きのこの初心者が、野外で採取したきのこを、自分の判断だけで食べるのは非常に危険です。きのこは地域差や個体差が大きいので、きのこの専門家ですら、実物を見ただけでは判断に迷う場合が少なくありません(確実に種を同定するには、顕微鏡を使ったり、遺伝子情報を解析する必要があります)。

きのこの食毒に関しては、図鑑だけに頼らず、きのこに詳しい人や専門家の判断を必ず仰ぎましょう。きのこのことを詳しく知りたい方は、各地で行われている、きのこ観察会やきのこ同定会に参加することをお勧めします。

現在では人工栽培技術が発達しているので、スーパーマーケットで売っている栽培きのこ(マツタケなど樹木と共生する菌根菌は人工栽培技術がまだ未確定!)も、とてもおいしいです。まずは、こちらで、舌鼓。

STEP 6

『やった!レポ』に投稿しよう

きのこを見つけたら、写真を撮影して、『やった!レポ』に投稿してみましょう。観察したときに感じたこと、生えていた場所などを、コメントしてみんなでシェアしましょう。

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まとめ

自然のきのこを探すことは、日常生活からちょっと離れた、とっておきのリクレーションではないかと思います。図鑑で見ていたあのきのこを、フィールドで、自分が見つけたときの嬉しさ!もう最高です。

きのこを見つけたら、五感を駆使して、思いっきり楽しみましょう。しかし、残念なことに、きのこの音を楽しむのはちょっと大変かもしれません……。ミズゴケの中には胞子が入った「袋」が弾けるとき、パチッという音がするものもあるらしいので、そんなきのこがもしかしたらあるかもしれません。

きのこは、街でも、原生林でも、1年365日見ることができます(多年生のきのこも多数)。同じきのこを長く観察するもよし、新しいきのこを探してフィールドを新規開拓するもよし。それぞれの方法できのこを楽しんでください。きのこが身近になれば、きっと自然の見え方も変わってくるはず。それこそが、きのこ観察の最大の醍醐味だと思います。

もっときのこを知りたい人のために
オススメ参考文献
ぼくの著書『森のきのこ、きのこの森』をご参考にどうぞ
http://ukigumoclub.com/index_06.html
『増補改訂新版 日本のきのこ(山溪カラー名鑑)』山と溪谷社
https://goo.gl/rh714p
『きのこ博士入門―たのしい自然観察』根田仁/著、伊沢正名/写真 全国農村教育協会
https://goo.gl/KhqHVj

※このHOW TOでは、きのこの食毒について触れておりますが、実際に判断する場合には必ず専門家にご相談ください。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性3
4知性
4感性
アクティビティ
探す
環境
山 ・ 森 ・ 街 ・ 公園
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
1時間~3時間
対象年齢
小学校低学年以上
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