狩猟採集、野外活動、自然科学を主なテーマに執筆・編集するフリーランスのエディター、ライター。川遊びチーム「雑魚党」の一員として、水辺での遊び方のワークショップも展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。twitterアカウントは@y_fomalhaut。
パチンコは数十年前から日本に伝わる猟具。最近は玩具店などで見かけることが少なくなりましたが、以前はどんな男の子も一度は手にとる一般的な遊び道具でした。
日本では法律によって鳥獣を獲ることを規制されていますが、東南アジアや太平洋諸国では、今も毎日のおかずの調達に活躍しています。国によっては子供だけなく、大人やおばさんが首にさげている場所も……。
狙った場所に命中させられるようになるには、ちょっとした練習が必要。才能や運動神経はもちろん影響するものの、運動が苦手な人でも練習次第で百発百中の腕前になれることも道具としての魅力です。
自分の身体だけでは生み出せない力を、簡単な工作によって手に入れられること、自分が作った道具と相談しながら、自分の体になじませることを学べるのもパチンコの魅力のひとつです。
【連載】野生児育成計画
#1 大潮の夜を探検! 真夜中の磯遊び
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/67
#2 「水切り」と「遠投」をマスターせよ!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/79
#3 木の枝からパチンコを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/93
#4 焚き火を使って「干し肉」を作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/97
#5 春の小川で「草摘み」に挑戦!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/100
#6 潮干狩りで狩猟採集生活にデビュー!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/102
#7 空き缶でウッドガスストーブを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/112
#8 五寸釘を七輪で熱してナイフを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/118
のこぎり
1丁
ナイフ
1本
自転車の古チューブ
4つ
アメゴムチューブ15cm(直径1cm程度)
2本
ナイロンバンド幅3cm、長さ5cm程度
1本
ライター
1つ
穴を開ける鉄の棒
1本
木の枝
1本
ゴーグル
1つ
パチンコ作りに必要な素材は、木の枝とアメゴムのチューブ、ナイロンのバンド、そしてこれらを結び合わせる自転車のチューブの4つ。ナイロンのバンドは使い古したバックパックのストラップなどからちょっと切り取ればOK。切り取った後は両端をライターで炙って溶かし、ほつれ止めをしておきましょう。また、両端にゴムを通したいので、熱した鉄の棒を当てて、溶かして穴を開けておきます。
自転車の古チューブは、幅1cm、長さ50cm程度で4本切り出しておきます。
アメゴムのチューブはホームセンターで、自転車の古チューブは自転車店で手に入ります。
野山を歩いて、手頃なY字型をした枝を探します。腐敗しているものは強度が低いので、切り出したら必ず切り口の匂いを嗅いでみましょう。キノコのような匂いがしたら、その枝は菌類による分解が始まっているので材料として不適です。
Y字を切り出せたら、アメゴムをくくりつける部分をナイフで削って成型。続けて、ゴムが収まりやすいに凹みも作っておきましょう。この凹みがないと、ゴムを引いた時に枝の丸みに沿ってゴムが滑ってしまいます。
なるべく左右の枝のバランス(太さ、曲がり具合)が均等なもので、握る部分が太すぎも細すぎもしないものを選部のがおすすめです。
木の枝が用意できたらY字の先端にアメゴムの端を沿わせ、強く引いた状態で上から古チューブでぐるぐる巻きにします。アメゴムを引いて細くした状態で巻き締めないと、ゴムを引いた時に固定した部分が細くなりすっぽ抜けてしまうからです。一人では難しいので、2人で作業するのがおすすめです。ゴムで巻き締めた後は固結びを2回繰り返して余分を切りとします。ナイロンバンドも同様の方法で処理しましょう。
パチンコには強い力がかかり、壊れたりゴムが抜けたりするとケガにつながることも。できあがったら、各部がきちんと固定できているか念入りにチェックしましょう。
パチンコの構え方には、(1)Y字の上端を結んだ線の上に的を合わせる方法 (2)腰だめにして勘で狙う方法の2つがありますが、おすすめは(2)の狙い方。(1)の方法だとパチンコが手からすっぽ抜けたり、ゴムが切れた時に眼球を叩くことがありえるからです。また、腰だめで勘で狙うのは身体感覚を磨く効果も期待できます。
夢中になるとついつい安全確認がおろそかになりがち。パチンコの扱いに慣れるまでは、ゴムが切れたり抜けたりしたときに備えてゴーグルを着用しましょう。
パチンコの弾に使えるのは丸くて重みのある木の実や小石。形がいびつだったり、大きさがまちまちだと勘をつかみにくいので、弾はなるべく大きさや重さがそろっているものがおすすめです。
的を立てるのは開けた河原のような場所か後ろに崖がある場所で。パチンコの弾が届く距離を人が通るような場所は厳禁です。
また、自分の放った弾が跳ね返って自分の方に来たり、あらぬ方向に飛んでいくことも。どんな風に弾が跳ねても人や財産を傷つけない場所でしか使わないのがパチンコのルールです。
木の枝でパチンコ作りにチャレンジしてみたら、記念に写真を撮って『やった!レポ』に投稿して他の人にもシェアしてみましょう。質問や感想があれば、ぜひコメント欄に書き込んでください。
今回紹介した作り方は、南太平洋に浮かぶヤップ島に行った時に教わったもの。ヤップ島では子供も大人もパチンコを首からさげており、野生のニワトリや美味しい小鳥が視界に入ると、小石を取り出しては狙っていました。パチンコは地域によっては未だに現役の猟具なのです。
そして、ヤップ島でもパチンコは日本語そのままに「パチンコ」と呼ばれていました。太平洋戦争の前に入植した日本人が現地の人に作り方を教え、さらに数十年後、日本人の私が彼らから教わったわけです。
現在の日本の法律では、パチンコで自由に生き物を獲ることはできませんが、パチンコは非常に優れた猟具です。特に視線からずらした位置で構えて勘で的を狙う方法は、空間認識能力を高め、身体をコントロールする力も養います。
ちょっと危ない遊具であることもパチンコの魅力ですが、使い方次第では、自分や他の人を傷つけかねません。人が通るかもしれない場所には絶対に向けないこと、引いたゴムの延長線上に目を置かないことは遊ぶうえでの鉄則です。
【連載】野生児育成計画
#1 大潮の夜を探検! 真夜中の磯遊び
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#2 「水切り」と「遠投」をマスターせよ!
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#3 木の枝からパチンコを作る!
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#4 焚き火を使って「干し肉」を作る!
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#5 春の小川で「草摘み」に挑戦!
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#6 潮干狩りで狩猟採集生活にデビュー!
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