狩猟採集、野外活動、自然科学を主なテーマに執筆・編集するフリーランスのエディター、ライター。川遊びチーム「雑魚党」の一員として、水辺での遊び方のワークショップも展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。twitterアカウントは@y_fomalhaut。
暖かい春の日に河川敷に出かけると、ビニール袋とスコップを持った人が何やら収穫しているのを目にします。彼らが楽しんでいるのが「草摘み」。食べられる野草を、原っぱのなかかから探し出しているのです。
野草といっても伸びたばかりの新芽は売られている野菜に負けない風味。「野趣あふれる」とはまさにこのこと。摘んだ草をちょっとずつかじりながら、どんな料理に仕立てようかと考えるのは、草摘みをする人だけが知る楽しみです。
草摘みに適しているのは、しっかりとした土の土手。適度に草刈りがされている河川敷なら、散歩のついでに目を光らせるだけで、何種類もの食べられる草を見つけられるでしょう。
【連載】野生児育成計画
#1 大潮の夜を探検! 真夜中の磯遊び
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/67
#2 「水切り」と「遠投」をマスターせよ!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/79
#3 木の枝からパチンコを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/93
#4 焚き火を使って「干し肉」を作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/97
#5 春の小川で「草摘み」に挑戦!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/100
#6 潮干狩りで狩猟採集生活にデビュー!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/102
#7 空き缶でウッドガスストーブを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/112
#8 五寸釘を七輪で熱してナイフを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/118
草摘みの入門に向いているのは、小川の河川敷。石がちな川よりも、土の土手がある川のほうが種類も多く、株も太めです。流れている水がきれいであれば、クレソンのような水辺の野草も採集できます。
必要な道具はスコップ1本とビニール袋数枚。土手の土は以外と硬いので、スコップは丈夫なものを。収穫したものは種類ごとに袋を分けると、食べる前の処理が楽になります。
河川敷に生えている野草には、(1)食べて美味しいもの(2)美味しくないけど毒はないもの(3)毒があるものの3種類に大別できます。(1)のつもりで(2)を採るぶんには、「美味しくなかった」だけで済みますが、間違えて毒があるものを食べたら大変! 「絶対に食べても大丈夫」とわかるものだけを収穫しましょう。
食べられる野草の図鑑はたくさん出回っていますが、図鑑だけではなかなか同定しづらいもの。まったくの初心者は河川敷で草を摘んでいる人に教えてもらうか、地域の自然観察会に参加して、食べられる草を少しずつ覚えるのがよいでしょう。
「草摘み」のコツとマナーは「いろんな場所からちょっとずつ」。食べごろの株が群生していても根こそぎにはせず、群落からふたつみっつ食べごろの部分を採るのがマナーです。こうすると株にダメージが残らず、来年以降も草摘みを楽しませてくれます。また、美味しい部分を厳選することにもつながります。
ノビルのような、太い株と小さい株が混生するような草は、太いものをより分けたら、小さいものは埋め戻しておきましょう。
採った草はまずは匂いをかいで記憶。匂いは似た草を見かけたときに同定するヒントとなるからです。
日本の低地の河川敷でよく見つかるのがタネツケバナ、セイヨウカラシナ、ノビル、クレソン(オランダガラシ)、ミツバの5種。
ノビルとセイヨウカラシナは日向、ミツバとタネツケバナはちょっと水気のある場所、クレソンは水際で見つけることができます。これらの5種類は生やさっとゆがくだけで食べることができ、下ごしらえが面倒でないことも魅力。資源量も比較的豊富です。
緑が鮮やかで、柔らかい部分を選んで摘み取りましょう。
農薬こそかかっていることは少ないものの、都市近郊の河川敷に生える草には、鳥の糞や犬のオシッコなどがかかっているかもしれません。収穫物は泥や汚れをはらったあとに念入りに流水で洗いましょう。
調理はお好みの方法でよいですが、草それぞれの本来の味を楽しむなら、加熱やドレッシングは最小限に。さっと湯がく、あるいは生のままで食べると草の個性が引き立ち、味を覚えておけば同定の一助にすることもできます。
上の写真はクレソンとタネツケバナとミツバはベーコンとあわせてサラダにし、ノビルとセイヨウカラシナは湯通ししてそれぞれ酢味噌とみりんでのばした味噌をあわせました。野草にはアクもありますから、慣れるまでは少量ずつを食べるのがよいでしょう。
身近な場所で食べられる野草を発見したら、写真を撮ってみましょう。撮った写真は『やった!レポ』に投稿して、みんなとシェアしませんか?質問や感想はコメントに記入してください。
草摘みの魅力は、それまでは風景の一部だった「ただの草」を急に「食べ物」に変えてくれること。食べられる草を少しずつ覚えていけば、自分の家の周りが食べ物で満ち溢れていたことにあなたは気づくでしょう。
今回撮影したものも、東京郊外の私の家から徒歩数分の場所で見つけた草ばかり。入門なので5種類にとどめましたが、ざっと見渡しただけでも食べられる草が他にも5種類ほど見つかりました。
草摘みには食べられる草だけでなく、食べられない草や毒のある草にも興味を向ける効果もあります。草の名前を覚えるのは、親しい友人を増やすようなもの。ひとつの草を覚えると、それに似た草が気になりだし、その草を食べる生き物が気になりだし……とぐんぐん世界が広がっていきます。
草摘みに取り組んでいくうちに、きっとあなたはご近所の動植物の名前をすっかり覚えてしまうでしょう。
【連載】野生児育成計画
#1 大潮の夜を探検! 真夜中の磯遊び
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#2 「水切り」と「遠投」をマスターせよ!
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#3 木の枝からパチンコを作る!
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#4 焚き火を使って「干し肉」を作る!
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#5 春の小川で「草摘み」に挑戦!
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