狩猟採集、野外活動、自然科学を主なテーマに執筆・編集するフリーランスのエディター、ライター。川遊びチーム「雑魚党」の一員として、水辺での遊び方のワークショップも展開。著書に『海遊び入門』(小学館・共著)ほか。twitterアカウントは@y_fomalhaut。
9月はシュノーケリングに最も適した季節。海水温は8月とそれほど変わりませんが、初秋の磯は盛夏のころより魚の数が多くなり、透明度もぐんと高くなります。つまり、真夏並みの水温がありながら魚影が濃いのが9月の海なのです。
シュノーケリングで海中散歩するだけでも十分楽しめますが、狩猟本能が発達した人におすすめしたい遊びが「泳ぎ釣り」。泳ぎながら魚の潜んでいそうな場所を探し、そこに餌を送りこんで釣り上げるアグレッシブな釣りです。
魚の姿を見ながら釣り上げる泳ぎ釣りは、種類ごとに異なる餌の取り方や、生態の違いを観察するのにもうってつけ。いろんな餌やアプローチで魚たちにせまってみましょう。
【連載】野生児育成計画
#1 大潮の夜を探検! 真夜中の磯遊び
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#2 「水切り」と「遠投」をマスターせよ!
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#3 木の枝からパチンコを作る!
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#4 焚き火を使って「干し肉」を作る!
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#5 春の小川で「草摘み」に挑戦!
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#6 潮干狩りで狩猟採集生活にデビュー!
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#7 空き缶でウッドガスストーブを作る!
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#8 五寸釘を七輪で熱してナイフを作る!
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#9 夏の夜の雑木林を探検!
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#10「カラムシ」の繊維で紐を作ろう
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#11 魚の多い秋の磯で、シュノーケリングで泳ぎ釣り!
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スノーケリングの基本の道具といえば、マスク、スノーケル、足ひれの3点セット。体に合っていればどんなものでもよいですが、マスクの良し悪しで快適さに大きな差が出るので、マスクだけはお店できちんと顔に合わせて選びましょう。
バンドを使わずに顔にマスクを合わせ、鼻から息を軽く吸ってぴたっとマスクが顔に貼り付けばフィット感はOK。どこかから空気が漏れてマスクが簡単に外れてしまうものは、水に入るとすぐに浸水してきます。
服装は体のラインにそった水着がおすすめです。秋の海はクラゲなどの刺胞生物も増えるので、ラッシュガードのような水切れのよい化繊の長袖シャツを着て肌の露出部をできるだけ小さくしましょう。
子供と楽しむ場合は、ライフジャケットも必需品です。少々波にもまれても呼吸が確保できると、子供も安心してスノーケリングに集中できます。
ひとつ注意したいのが、化繊のシャツは水分をよく蒸発させること。水が蒸発しやすいということは、気化熱で体温が奪われやすいということでもあります。陸に上がって風に吹かれると途端に体が冷えてしまうので、陸に上がったらシャツを脱いだほうが体を冷やしません。
観察をメインにするなら、釣り竿は単純なもので十分です。1m程度の竹竿の先に小さな鉤をつけた短いハリスを結び、磯で見つけた貝などを砕いてその身をつければ仕掛けは完成。石の下にいるゴカイの仲間や、ヤドカリや小さなカニなども餌になります。
カサゴやメバル、ハタなどの大物(泳ぎ釣りでは、カサゴやメバルも大物です)を狙うなら、安いリール竿とリールを用意しましょう。リールは海水に浸けると内部が錆び付いてしまうので、釣具店で安売りされているものやリサイクルショップの中古品で十分です。
リール竿のセットに付けるのは「ジグヘッド」と呼ばれるおもりと一体になった鉤。ここに「ワーム」と呼ばれる疑似餌か、イカの短冊を付けましょう。
海水に浸けたリールはそのままにしておくとサビついてしまうので、海から上がったら、なるべく早く真水で洗ってよく乾かしましょう。
スノーケリングに適しているのは波の穏やかな浅い岩場。ゴロタ(スイカほどの丸石)の岩浜や、複雑に入り組んだ岩棚が広がっている場所は隠れ家が多いぶん、魚種も魚影も豊富です。砂浜は海水浴には適していますが、隠れる場所が少ないので生き物の数はずっと少なくなります。
潮を選べるなら、最干潮から潮が満ち始めるタイミングで海に入るのがベスト。潮が下がっているぶんだけ魚がふだん暮らしている泳層に近く、また上げ潮なので沖へ向かう離岸流が生まれにくくなります。その反対に、満潮から下げ潮に向かうタイミングに沖へと向かう強い流れが生まれる場所もあります。
竹竿を使った小物釣りのコツはひとつだけ。魚の群れを見つけて、そこにそっと近づいて餌を差し出すこと。相手に食い気があれば、すぐさま餌に食いつきます。海中を泳いでいると、数種類の小魚が集まって群泳している場所が見つかります。
そんな場面にゆきあったら、息を整えて魚たちの近くにゆっくり餌を差し出しましょう。ここでは急な動きは禁物。魚をはじめ生き物たちは急激な動きを「危険」として認識するので、素早い動きは魚を警戒させてしまいます。
群れのうちの1匹が餌をついばみ出したらチャンス! 群れのなかの狙った個体が餌をうまくくわえられるように竿先を動かし、くわえた瞬間素早くアワセて魚をとりこみます。どうにも魚の警戒心が強い時の裏技が、海底の砂をわざと巻き上げる「煙幕」です。
小魚たちは砂のなかの小さな甲殻類などが大好物。そのため、砂煙があがると警戒心に好奇心が勝ってすぐ近くまでやってきます。カワハギやベラの仲間に効く技ですが、ときには大きなクロダイの群れが遠くからやってくることもあります。
大物釣りのポイントは小物釣りのポイントよりも少し深い3m以深。ターゲットとなるメバルやカサゴ、ハタなどは岩陰に潜む魚なので、上からジグヘッドを下ろして丹念に岩陰の近くをさぐっていきましょう。
ジグヘッドを細かく上下させ、まるで生きているかのように見せると、突然岩陰から魚が飛びつくので、素早くアワセを入れて岩下に入られる前に巻き上げます。
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普通の釣りでは、極力人の存在を感じさせないようにして鉤をくわえさせますが、泳ぎ釣りは人の存在を認めてもらったうえで、鉤をくわえてもらいます。この点で泳ぎ釣りはほかの釣りと大きく異なっています。
毎日が真剣勝負の世界に生きる魚たちは、殺気に敏感です。ゆっくり、ていねいに餌を差し出しても、こちら側が「獲りたい」「食べたい」という気持ちを出したとたんに、ひゅっと逃げ出してしまいます。「動き」とともに「心」もコントロールしなくてはいけないのです。
泳ぎ釣りを楽しむコツは、獲物に執着しないこと。磯に暮らすすべての生き物とお近づきになる気持ちで遊泳すると、それまで背景に紛れていた本命以外の生き物が目につくようになります。暖流が流れ込む地域なら、南から潮に乗って流されてきた熱帯魚に出会うこともできるし、岩に擬態した貝やカニ、ちいさなウミウシなどにも目がいくでしょう。
そして、海中散歩を楽しめる心の余裕が持てるようになったときに、泳ぎ釣りでも釣果があがりはじめます。餌を介して、野生生物との交流を楽しむ。こんなところに泳ぎ釣りの醍醐味があります。
子供のころ、川で潜りながらのひっかけ漁やってたのを思い出しました。(普通、鮎のひっかけ漁だと潜らずに船から攻めたりますけどね)