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ザリガニは食材だ! 湧水で獲ったザリガニを食べよう

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藤原祥弘

エディター/ライター
固定観念を取り払い”食”の冒険に出よう

アメリカから日本にやってきて90年。今やアメリカザリガニは日本の里山のどこにでもいる子供たちの遊び相手になりました。ところが本国やヨーロッパでは、遊び相手ではなく食材として愛されています。日本人の感覚からすると抵抗がありますが、それはきっとアメリカザリガニを目にする場所が汚れた水辺だから。きれいな湧水を集めた川に棲むアメリカザリガニは、立派な食材です!ここでは、そんなアメリカザリガニを獲って美味しく食べる方法を紹介します。

【連載】野生児育成計画
#1 大潮の夜を探検! 真夜中の磯遊び
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/67
#2 「水切り」と「遠投」をマスターせよ!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/79
#3 木の枝からパチンコを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/93
#4 焚き火を使って「干し肉」を作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/97
#5 春の小川で「草摘み」に挑戦!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/100
#6 潮干狩りで狩猟採集生活にデビュー!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/102
#7 空き缶でウッドガスストーブを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/112
#8 五寸釘を七輪で熱してナイフを作る!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/118
#9 夏の夜の雑木林を探検!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/127
#10「カラムシ」の繊維で紐を作ろう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/135
#11 魚の多い秋の磯で、シュノーケリングで泳ぎ釣り!
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/141
#12 ザリガニは食材だ!湧水で獲ったザリガニを食べよう
https://gogo.wildmind.jp/feed/howto/168

READY
準備するもの
  • タモ

    1

  • バケツ

    1

STEP 1

湧水の川でザリガニを獲る

アメリカザリガニの味を左右するのは、棲んでいる環境。泥っぽい川で育ったものは長めに泥抜き(清水に泳がせて臭みを抜く作業)をしても、臭いが気になります。長年体に染み付いた臭いは1週間程度の泥抜きでは抜けないのです。また、アメリカザリガニの臭いが気になるような川では、化学物質などの面でも問題があるかもしれません。

出かけるべきは湧水を集めて流れる小川。玉砂利から水草が生えているような小川のアメリカザリガニは臭いもなく、化学物質の蓄積の心配もありません。「住んでいる都道府県」「湧水」といったキーワードで検索すると、家から1、2時間で行ける湧水ポイントが見つかるはずです。

川に着いたら、岸沿いの茂みにタモを構えて、足を使って上流側からタモの中へアメリカザリガニを追い込みましょう。アメリカザリガニが潜むのは比較的流れの緩やかな場所。環境の良い場所に固まって潜んでいるので、1匹見つけたらその周囲を丁寧に探すとよいでしょう。アメリカザリガニは見た目のわりに歩留まり(全体に対しての可食部の割合)が悪いので、多めに集めておきましょう。。

STEP 2

ザリガニの泥を抜く

泥抜きとは泥っぽい場所で獲れた獲物を清水に泳がせて、消化器官の内容物や臭みを抜く作業のこと。アメリカザリガニは雑食性なので、消化器官には死んだ魚の肉などが詰まっています。これらを出し切るまで、水替えをしがなら2、3日バケツに生かしておきましょう。

採集時はひとつのバケツにたくさん入れても構いませんが、泥抜きのときには十分な空間を設けておかないとストレスであっという間に死んでしまいます。なお、泥抜きに使う水は、水道水から塩素を抜いたものを使いましょう。

POINT

注意したいのは、移動と管理。外来のアメリカザリガニは緊急対策外来種に指定されています。採集地からの移動や泥抜き中に逃してしまわないよう注意が必要です。

STEP 3

ザリガニの下処理をする

  • 尾節の真ん中の1枚をつまむ
  • 上側へパキッと折る
  • ゆっくり引き背ワタを抜く

泥抜きが済んだらいよいよ調理。消化器官が空っぽになったとはいえ、器官そのものにも臭いがあるので最初に取り除きます。この消化器官とはいわゆる「背ワタ」。アメリカザリガニはエビに近い仲間なので、これ以降の処理はエビと同様だと思って構いません。

アメリカザリガニから背ワタを抜くときは、まずはまな板の上で押さえつけ、尾の先端の尾節の真ん中の1枚をつまみます。これを上側へパキッと折り、ゆっくり引くとアメリカザリガニの背ワタがするりと抜けてきます。背ワタを抜いたアメリカザリガニは水を張ったボウルに入れて血を抜きます。

処理が済んだアメリカザリガニは調理法に合わせて尾身、剥き身、上半身に分けます。先にも書いたとおり、アメリカザリガニは歩留まりが悪いので、下処理の段階で可食部だけに分けておくのが調理のコツ。ソースなどを使う料理では、殻付きのまま調理すると殻にばかりソースを取られてしまいます。

尾身、剥き身を使う料理と、上半身を煮込んでだしを取る汁物を一緒に作ると、無駄がありません。

STEP 4

ザリガニの塩茹で

いちばんシンプルな調理方法がアメリカザリガニの塩茹で。濃い塩水を沸騰させ、背ワタを抜いたアメリカザリガニを入れて茹で上げます。淡水に棲む甲殻類や淡水魚には、人間にも寄生しえる寄生虫がいる可能性があるので、しっかりと火を通しましょう。

食べ方は尾部と甲羅のつなぎ目から尾をむしり、尾の中の身を食べます。アメリカザリガニの身は淡白な味わいなので、好みでマヨネーズなどをつけてもよいでしょう。甲羅のなかのミソも食べられますが、好き嫌いが分かれるかもしれません。

POINT

アメリカザリガニには人間にも寄生し得る寄生虫がいる場合もある。調理の際はきちんと火を通すこと。

STEP 5

ペッパークレイフィッシュ

シンガポール発祥のカニ料理に「ペッパークラブ」というものがあります。これはコショウを効かせたスパイシーな料理で、カニに限らずどんな甲殻類にも合うレシピです。「クレイフィッシュ」とはザリガニのこと。つまりペッパークラブのザリガニ版です。

用意するのはショウガ、ニンニク、赤唐辛子、魚醤、オイスターソース、砂糖、油、バター。そして大量のコショウ。熱したフライパンに油を引いたら、みじん切りにしたショウガ、ニンニク、赤唐辛子を炒め、そこにアメリカザリガニの尾身を追加。炒めながら魚醤、オイスターソース、砂糖、バターを入れ、最後にコショウを多めにふります。

淡水の甲殻類は旨味と油に欠けるのですが、それを補ってあまりある風味に仕上がります。子供より、大人が喜ぶ味付けです。

STEP 6

トムヤムザリガニ

アメリカザリガニの調理では、料理に使える分だけ尾身を用意すると、大量の上半身が残ります。これを無駄なく使えるのがスープです。

鍋にアメリカザリガニの上半身を入れたら、ヒタヒタの水で煮出し、アメリカザリガニのスープストックを作ります。このスープストックはどんな調味をしてもよいのですが、どちらかというと旨味を補う調理法が向いています。

簡単に作れて美味しいのがトムヤムクン。トムヤムクンは言わずと知れた、エビを使ったタイを代表するスープのひとつ。最後の音節の「クン」とはエビのこと。トムヤムザリガニは、トムヤムスープのザリガニ版です。

スープストックができたら、スープで好みの野菜を煮こんで市販のトムヤムスープで調味。最後にコリアンダーをわさっとトッピングして完成です。アメリカザリガニのミソのコクが生きるスープです。

STEP 7

ザリチリ

アメリカザリガニの剥き身を使ったエビチリのザリガニバージョン。市販のレトルトソースを使うと簡単に作れる、子供にも人気の一品です。

STEP 8

写真を撮って『やった!レポ』に投稿しよう

美味しいザリガニ料理が作れたら、写真を撮ってやった!レポにアップしよう。気づいたことや工夫したこともあれば、コメントに書いてください。

MATOME
まとめ

「食べ物」と「食べられない物」は、大抵の場合、味や毒性によって線引きされていますが、これ以外に「文化」によって隔てられることもあります。

たとえば、エビ、カニ、シャコといった甲殻類。これらを私たちは「美味しそう」と感じますが、よく似ているタイノエやグソクムシのことは、まず食べ物だと思いません。どちらかといえば、気持ち悪い生き物だと感じてしまいます。

ところが、タイノエもグソクムシも、食べてみるとエビやカニに劣らない食味です。グソクムシの身はエビをずっと濃厚にした味わいで、十分食材として通用します。もしもグソクムシが食材としてスーパーに並び、子供の頃からそれを食べていたら、私たちはグソクムシを見たときに「美味しそう」と思うようになったでしょう。

その反対に、エビ、カニ、シャコを食べない文化で育っていれば、私たちはこれらを気持ちの悪い生き物だと捉えていたかもしれません。

このように、「食べ物」と「食べられない物」の判断は、育った環境で左右されます。日本ではまず食材として扱われないアメリカザリガニも、海外では食材として大切にされています。フランスでは、ザリガニを獲るために川にピクニックに行き、罠をしかけてからワインを飲みつつザリガニが入るのを待つのだとか。日本のザリガニ獲りと比べて、とても優雅です。

アメリカザリガニを食材としてとらえたとき、問題になるのは水質だけ。これさえクリアできれば、アメリカザリガニは日本でも立派な食材になり得ます。「アメリカザリガニは子供の遊び相手」と思っている人にとって、アメリカザリガニを食べてみるのは、自身の食への固定観念を揺さぶる体験になるかもしれません。

GROW CHART
成長スコアチャート
野性5
3知性
3感性
アクティビティ
食べる
環境
季節
春 ・ 夏 ・ 秋 ・ 冬
所要時間
1日以上
対象年齢
小学生高学年以上
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